San Francisco Cable Car|世界で唯一現役の歴史的ケーブルカー

サンフランシスコ(San Francisco)を象徴する風景のひとつが、鐘の音を鳴らしながら急な坂道をきしむ音を立てて進むケーブルカーの姿です。道路に埋め込まれたケーブルで車両を引っ張って走る、世界で唯一残る手動式ケーブルカー・システムで、1964年にはアメリカの国定歴史建造物(National Historic Landmark)に指定されました。市民の生活を支える公共交通機関でありつつ、毎年およそ970万人が利用するとされ、その多くは観光客とされています。

ゴールドラッシュで沸いた19世紀後半、サンフランシスコは急速に発展する一方で、急坂が多い地形ゆえに交通事故が頻発していました。特に、雨の日には道が滑り、路面電車と馬車が衝突するといった悲惨な事故も起きていました。その光景に心を痛めたイギリスからの入植者Andrew Smith Hallidie(アンドリュー・スミス・ハリディー)は、自身が導入していたワイヤーを使って鉱山から鉱石を運び出す仕組みを応用し、地中に張り巡らせたケーブルを車両がつかんで走るという、当時としては画期的なシステムを考案しました。

1873年に運行を開始したケーブルカーは、急な坂道でも安定した移動を可能にし、町の発展を支える重要なインフラとなりました。その後、路面電車やバスが普及し、1906年のサンフランシスコ地震と大火では大きな被害を受けましたが、市民の強い支持によってケーブルカーは守られ、現在の姿へとつながっています。

現在、サンフランシスコのケーブルカーは3つの路線で運行されています。California Street Line はフェリービルディング周辺からカリフォルニア・ストリート沿いに金融街とノブヒルを結び、Powell–Hyde Line と Powell–Mason Line の2路線は、ダウンタウンのユニオンスクエア(Union Square)地区とフィッシャーマンズ・ワーフ(Fisherman’s Wharf)を結んでいます。

これら3路線のケーブルカーは、レトロな車両に乗る体験そのものが魅力であるだけでなく、この町の中でしか見られない風景を楽しめる点も特徴です。たとえば、Powell–Hyde Line と Powell–Mason Line が交差するパウエル・ストリートとマーケット・ストリートの交差点では、ターンテーブルを使って車両が方向転換する様子を見ることができます。また、Powell–Hyde Line が California Street Line の線路を横断する際、いったんケーブルを離して通過する光景も見どころです。

こうした共通の魅力に加えて、3つの路線それぞれに異なる景色や個性があるのも大きな魅力です。California Street Line は、金融街からノブヒルへと一直線に延びる急勾配の坂道から眺める、ダイナミックな都市景観が魅力です。一方、Powell–Hyde Line はサンフランシスコ湾やアルカトラズ島を望む“絵になる風景”で知られ、観光客から特に高い人気を集めています。そして Powell–Mason Line は、1888年の開通以来、同じ種類の設備と推進方式で同一ルートを走り続けている路線として知られ、その歴史的な姿が今も多くの人を惹きつけています。

ケーブルカーの乗車時間は、路線の端から端までおよそ16分です。チケットの購入には Muni Mobile アプリが便利で、1回乗車券のほか、1日乗車券なども用意されています。運行時間は毎日おおむね7時から21時ですが、曜日や時期によって異なるため、最新情報は公式サイトで確認するのがおすすめです。

ケーブルカーの仕組みや歴史にさらに興味を持ったら、San Francisco Cable Car Museum に立ち寄ってみるのもよいでしょう。無料で見学でき、実際に動いている巨大なケーブルや運行システムを間近に見ることができます。Powell–Hyde Line と Powell–Mason Line の停留所からアクセスしやすく、観光の合間に気軽に訪れられるスポットです。

サンフランシスコのケーブルカーは、町の地形や歴史、人々の暮らしを体感しながら走る、いわば“動く歴史遺産”です。今も現役で使われ続けているからこそ、この町らしい風景として生き続けています。坂道の多いサンフランシスコを観光する際には、滞在先にクルマを置き、ケーブルカーに乗って町の表情や歴史を味わうのも、町を楽しむ選択肢のひとつです。

Location / Address

San Francisco Cable Car
Official Web Site: San Francisco Cable Car

photo:© San Francisco Travel Association ©Visit California/Carol Highsmith ©Visit California/Hub