Highway 1、2026年3月末に全面再開へ。約3年の通行止めに終止符

カリフォルニア州を象徴する海岸沿いの絶景道路、Highway 1(California State Route 1 / SR-1)は世界でも屈指の美しさを誇り、「一生に一度は走りたいロードトリップ」と称されるルートです。しかし、2023年春に発生した大規模な地滑り「リージェンツ・スライド」の影響で、現在もビッグサー周辺の一部区間が通行止めが続いています。通行止めから約3年、その再開時期は長らく不透明なままでしたが、このたびカリフォルニア州交通局(Caltrans)が2026年3月末までの全面再開を目指す新たなタイムラインを発表し、長い道のりの先にようやく明るい兆しが見えてきました。

通行止めの背景にあるのは、ビッグサー特有の急峻な地形と、太平洋から吹き付ける過酷な気象条件です。崩落箇所の安定化や補強作業は複雑かつ困難を極め、雨季の影響で作業が中断されるリスクも依然として残っています。それでも、州政府や関係者による継続的な取り組みにより、ようやく再開への道筋が具体化しました。

観光業界にとって、この発表は大きな前進といえます。Highway 1は単なる道路ではなく、カリフォルニアの沿岸経済を支える生命線でもあります。Beacon Economicsの調査によると、通行止めが始まって以降、地域は月あたり1300万〜1400万ドルの観光収入を失い、2023年から現在までの損失は総額4億2800万ドルに達したといいます。特に影響が大きいのはサン・シメオンとビッグサーの地域で、それぞれ観光支出が42%、20%減少しています。地元の宿泊業、飲食業、観光事業者にとっては深刻な打撃であり、再開への期待は非常に大きいものになっています。

こうした状況のなか、カリフォルニア観光局(Visit California)は復旧支援と情報発信を強化しています。夏には現場視察や地元企業との意見交換を行い、観光業界の声を行政に届ける場を設けました。また旅行者への発信も活発に続けられています。注目すべきは「Up Around the Bend」と題したキャンペーンです。Highway 1の南の玄関口であるラグド・ポイントを舞台に撮影されたこの映像は、アメリカ国内をはじめ、イギリス、カナダ、メキシコ、中国、オーストラリアといった主要市場で放映されました。1890万ドル規模の広告キャンペーンを通じて、「Highway 1体験は今も可能であり、多くの魅力が手の届く範囲にある」というメッセージが世界中の旅行者に届けられています。

実際、現在でもビッグサーの多くのエリアにはアクセスが可能です。北側からはビクスビー・クリーク・ブリッジやフェイファー・ビッグサー州立公園(Pfeiffer Big Sur State Park)などへ、南側からはサン・シメオンやカンブリア(Cambria)、パソロブレスのワイナリー地域などへクルマで訪れることができ、完全復旧を待たずとも、カリフォルニアらしい海岸線の風景とロードトリップ体験は十分に楽しめます。しかし、サンフランシスコ(San Francisco)からロサンゼルス(Los Angeles)へ、あるいはロサンゼルスからサンフランシスコへと、車窓から太平洋を眺めながら海岸線を縦断するドライブ体験は、やはり格別なもの。道が一本につながることでしか味わえない「旅の連続性」と「達成感」がそこにはあり、それこそがHighway 1が“世界最高のロードトリップ”を楽しませてくれる場所と呼ばれるゆえんなのです。

2026年3月末という再開目標は、長く続いた通行止めに終わりが見えてきたことを示す希望のサインです。しかし、復旧作業は依然として自然条件に大きく左右されるため、計画が変更される可能性も否定できません。旅行を計画する際は、Caltransの公式情報をこまめにチェックすることをおすすめします。

California Department of Transportation

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