サンディエゴ(San Diego)のダウンタウンと、対岸のリゾート地コロナド(Coronado)を結ぶコロナド・ブリッジ(San Diego–Coronado Bridge)は、サンディエゴ湾の上に美しい弧を描くランドマークです。青い海と空を背景に優雅なカーブを描く姿は、都市の象徴として長く愛され続けています。1969年に完成したこの橋は、単なる交通の架け橋ではなく、この地の発展の歴史と深い関わりを持っています。
20世紀半ばまで、サンディエゴ湾を横断してコロナドへ渡る手段はフェリーしかありませんでした。コロナドにはアメリカ海軍の基地(Naval Base Coronado)があり、多くの軍関係者が行き来していたものの、一般市民や観光客には不便な場所でした。1920年代から橋の建設計画はたびたび持ち上がりましたが、万一の攻撃や地震で橋が崩落した際に、湾を航行する艦船の通行を妨げるおそれがあるとして、アメリカ海軍が反対していました。
1950年代後半になると、サンディエゴの人口増加と観光開発が進み、都市の交通渋滞は深刻化。コロナド島もホテル・デル・コロナド(Hotel del Coronado)を中心にリゾート地として注目を集め始めていました。こうした中で、橋の建設は地域経済を支えるための重要なプロジェクトとして再び浮上します。冷戦期にあたり、海軍の存在感が強まっていた時期でもありましたが、「艦船が通過できる十分な高さを確保すること」を条件に、ついに海軍も建設を承認。1964年、カリフォルニア州道路局(現Caltrans)の協力のもと国防総省が正式に建設を認可し、5年の歳月をかけて工事が進められました。1969年8月3日の開通式には、当時のカリフォルニア州知事ロナルド・レーガンも出席し、地域全体が祝賀ムードに包まれました。
設計を担当したのは、ロバート・モッシャーとジム・フィッシャーを中心とするエンジニアチーム。橋は全長2.12マイル(約3.4km)、中央部の高さは200フィート(約61m)に達し、湾内を通る空母や大型艦船の航行を妨げない設計になっています。サンディエゴ湾を象徴する優雅なカーブは、構造的な安定性と美観の両立を意図したもので、そのデザイン性から1970年にはアメリカ鉄鋼構造協会(AISC)によって「最も美しい橋(Most Beautiful Bridge)」に選ばれました。

塗装には、空と海が溶け合うような明るい青「サンディエゴ・ブルー」が採用されています。この色は光の角度によって微妙に表情を変え、晴れた日には海と一体化したように見えます。特に夕暮れ時、オレンジ色に染まる空を背景に浮かぶ青い橋のシルエットは、まるで絵画のような美しさです。
建設から半世紀を経た現在も、コロナブリッジは特別な存在として市民から愛されています。毎年開催されるチャリティイベント「コロナド・ブリッジ・ラン/ウォーク」では、普段は車専用の橋の上を歩行者が渡ることができ、多くの市民がこの特別な体験を楽しんでいます。
その優美な姿を撮影するなら、橋を間近に望むビューポイントへ足を運ぶのがおすすめです。コロナド島側のタイドランズ・パーク(Tidelands Park)は、橋全体を見渡せる人気スポット。芝生越しに眺める朝の光景や夕焼けは、橋の曲線の美しさを最も感じられます。ダウンタウン側ではセサル・チャベス・パーク(César E. Chávez Park)からの眺めが印象的で、青い橋が湾に弧を描く姿を一望できます。また、橋脚下のチカーノ・パーク(Chicano Park)では、巨大な支柱とメキシコ系アメリカ人コミュニティの壁画が共存し、サンディエゴの多文化的な一面を垣間見ることができます。

サンディエゴのダウンタウンからは州間高速道路5号線(I-5)を南に進み、州道75号線(CA-75)を経由してコロナド・ブリッジへアクセスします。片側2車線ずつの計4車線で、通行料は無料。橋上からはサンディエゴ湾やダウンタウンの高層ビル群、そして太平洋まで一望でき、晴れた日にはメキシコ国境付近まで見渡せることもあります。橋の上に駐停車はできませんが、コロナド側に渡った先には無料・有料の公共駐車場があり、車を停めてゆっくり散策を楽しめます。サンディエゴの発展とともに歩んできたこの橋を渡るドライブは、町の歴史と景観を体感できる時間となるでしょう。
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photo:©San Diego Tourism Authority

