Ashland|シティガイド:オレゴン・シェイクスピア・フェスティバル開催地の芸術の町

オレゴン州南部の山あいにあるアシュランド(Ashland)は、芸術と自然が共存する美しい町です。カリフォルニア州との州境に近く、インターステート5号線(I-5)沿いに位置するこの人口約2万人の小さな町は、オレゴン・シェイクスピア・フェスティバル(Oregon Shakespeare Festival)の開催地として世界的に知られています。さらに「アメリカの小さなアートタウン ベスト100(The 100 Best Small Art Towns in America)」のトップ10にも選ばれ、年間を通して多彩な文化イベントが開かれる、南オレゴン屈指の観光地です。

アシュランドは19世紀半ば、金鉱の発見とともに開拓者たちによって発展しました。その後、「アシュランド・ミルズ」と呼ばれる製材所や製粉所が建ち、鉄道の開通や温泉リゾートとしての人気を背景に町は栄えます。やがて芸術と教育の町へと変化していき、1872年には現在の南オレゴン大学(Southern Oregon University)が創設されました。学生やアーティストが多く暮らすことから、知的でオープンなコミュニティが育まれています。

この町を象徴するオレゴン・シェイクスピア・フェスティバルは、1935年に始まりました。春から秋にかけて古典劇から現代劇まで幅広い作品が上演され、シェイクスピア作品を本格的に演じる劇団としては全米有数の規模を誇ります。劇場を囲む通りにはブックショップやカフェ、ギャラリーが立ち並び、芸術の町らしい落ち着いた雰囲気が漂います。

劇場以外にも、町の中には歴史を感じさせる建物が数多く残っています。なかでも1925年築のアシュランド・スプリングス・ホテル(Ashland Springs Hotel)は、アールデコとクラシカルな意匠が融合した美しい外観が印象的なランドマークです。レストランやスパを併設し、演劇鑑賞やワインツーリズムを楽しむ旅行者の滞在拠点として人気があります。夜には劇場帰りの人々がカフェやバーで語らう姿が見られ、どこかヨーロッパの小都市を思わせる雰囲気が漂います。

アシュランドのもうひとつの魅力は、自然との距離の近さです。ダウンタウンに隣接するリシア・パーク(Lithia Park)は、約100エーカーの広さを誇る緑豊かな公園で、小川沿いの遊歩道や日本庭園、芝生エリアが整備されています。紅葉の季節には公園全体が色づき、散策に訪れる旅行者や地元の人々で賑わいます。

また、車で1時間弱南へ進むと、標高約2300mのマウント・アシュランド(Mt. Ashland)がそびえます。冬はスキーリゾートとして人気があり、晴れた日には遠くカリフォルニア州の山々まで見渡せる絶景スポットです。夏季にはハイキングやマウンテンバイクのトレイルが整備され、四季を通して自然と触れ合うアクティビティが楽しめます。周辺にはローグバレー(Rogue Valley)のワイナリーが点在し、オレゴン・ワインカントリーの南の玄関口としても注目されています。

アシュランドは南オレゴンのロードトリップの拠点としても最適です。北へ約2時間半でクレーターレイク国立公園(Crater Lake National Park)、西へ向かえばローグ・アンプクア・シーニックバイウェイ(Rogue–Umpqua Scenic Byway)を通って、美しい渓谷や滝をめぐることができます。南に進めばカリフォルニア州のマウント・シャスタ(Mt. Shasta)やレディング(Redding)方面へと続き、オレゴンとカリフォルニアをつなぐドライブの中継地点としても便利です。

芸術、歴史、自然、そして人の温かさ。これらが調和したアシュランドは、南オレゴンを象徴する小さな文化都市です。大都市の喧騒から離れ、ゆったりとした時間の中でアートや自然を味わいたい旅行者にとって、心に残る滞在となるでしょう。

Location / Address

Ashland
110 E Main St, Ashland, OR
Official Web Site: Ashland

photo:©Travel Oregon ©Traveloregon.com