Volcanic Legacy Scenic Byway|クレーター・レイクから南オレゴンを巡る火山遺産の道

ヴォルカニック・レガシー・シーニックバイウェイ(Volcanic Legacy Scenic Byway)は、オレゴン州のクレーター・レイク国立公園(Crater Lake National Park)からカリフォルニア州のラッセン火山国立公園(Lassen Volcanic National Park)へと続く、全長約800kmの壮大な景観道路です。アメリカを代表する景観道路として「All-American Road」に指定され、「火山から火山へ」をテーマに、火山地形と生態系、歴史や文化を体感できる特別なルートとなっています。

この地域は環太平洋火山帯に属し、数百万年にわたる火山活動の痕跡を今に伝えています。氷河や噴火によって形づくられた大地は、多様な野生動物と渡り鳥の楽園でもあり、開拓史や先住民文化の舞台としても重要なエリアです。

オレゴン州側の起点となるのは、ベンド(Bend)とクレーター・レイクの中間に位置するダイアモンドレイク・ジャンクションです。州道138号(OR-138)を西へ進み、アンプクア国有林(Umpqua National Forest)の森を抜けると、クレーター・レイク国立公園の北入口に到達します。

クレーター・レイクは、標高2400mを超えるマザマ山(Mt. Mazama)が約7700年前に大噴火を起こし、山体の上部が崩壊してできたカルデラ湖です。湖の最深部は594mで、アメリカで最深、世界で9番目に深い湖として知られています。このクレーター・レイクを含むクレーター・レイク国立公園は、1902年に全米5番目の国立公園に指定されおり、1915年に建てられ現在は国家歴史登録財にも指定されているクレーター・レイク・ロッジ(Crater Lake Lodge)は現在も宿泊することができます。湖の周囲には全長33マイル(約53km)におよぶリム・ドライブ(Rim Drive)があり、車で湖を一周することができます。なお、冬は平均13mを超える積雪により道路や施設の多くが閉鎖されます。

クレーター・レイク国立公園の南口から州道62号(OR-62)を南下すると、フォート・クラマス(Fort Klamath)の町へ到着します。この町は、19世紀に軍事拠点として建設され、1872〜73年のモドック戦争の舞台となった場所です。現在は遺跡が国家歴史登録財に指定されており、フォート・クラマス郡博物館(The Fort Klamath Museum)の一部になっています。周囲には牧草地が広がり、近くを流れるウッド川はフライフィッシング、バードウォッチング、カヤックを楽しみ人たちに人気です。

フォート・クラマスの町を出て、ウィード・ロード(Weed Road)からセブンマイル・ロード(Sevenmile Road)、そしてウェストサイド・ロード(Westside Road)を進むと、やがてオレゴン州最大の淡水湖、アッパー・クラマス湖(Upper Klamath Lake)が広がります。面積約350平方キロメートルにおよぶこの湖を含む一帯は「クラマス盆地国立野生生物保護区複合施設(Klamath Basin National Wildlife Refuge Complex)」として保護され、ベアバレーやロウアー・クラマスなど6つの国立野生生物保護区が点在しています。五大湖以西で最大級の淡水生態系を構成するこの盆地は、太平洋岸を南北に渡る「パシフィック・フライウェイ」の重要な中継地でもあり、春と秋の渡りの時期には100万羽を超える水鳥が飛来します。アメリカシロペリカンやカナダヅル、冬に越冬するハクトウワシなど、多様な鳥類が観察でき、体重9kgに迫るレインボートラウトが生息する釣りの名所としても知られています。

アッパー・クラマス湖の南端にあるクラマスフォールズは、1900年代初めの鉄道開通をきっかけに発展し、当時はサンフランシスコなどからの旅行者で賑わう都市型リゾートとして知られました。現在もアールデコ様式のロス・ラグランド劇場(Ross Ragland Theater)や、1906年築のボールドウィン・ホテル博物館(Baldwin Hotel Museum)が往時の姿を伝えています。ファヴェル博物館(Favell Museum)では、西部開拓史や先住民文化に関する10万点以上の資料や銃器コレクションなど、見応えある展示が並びます。

クラマスフォールズからU.S.ルート97号線(U.S. Route 97)を南下し、ベアバレー国立野生動物保護区とロウアー・クラマス国立野生動物保護区の間を抜け、カリフォルニア州境へと向かいます。州境にはローグ川とウィラメット渓谷南部を目指した開拓者たちがオレゴン・トレイルの代わりに利用したアップルゲート・トレイルを記念するフランシス・ランドラム歴史歩道(Frances S. Landrum Historic Wayside)があり、ここでオレゴン区間は終わります。そしてルートはカリフォルニア州へと続き、シャスタ山を経てラッセン火山国立公園(Lassen Volcanic National Park)へと続いていきます。

ヴォルカニック・レガシー・シーニック・バイウェイのオレゴン区間は、アメリカ最深のカルデラ湖クレーター・レイクと州最大の淡水湖アッパー・クラマス湖を結ぶ特別なルートです。火山活動が形作った大地、多様な生態系、歴史と文化を凝縮したこの道は、1日以上かけてじっくりと巡りたい魅力にあふれています。All-American Road らしい、壮大な自然と人類史のストーリーを伝えるルートになっています。

ロードトリップ計画のポイント

四季折々に異なる魅力を見せてくれるヴォルカニック・レガシー・シーニック・バイウェイ(オレゴン区間)のベストシーズンは、6月~10月。クレーター・レイク国立公園の北口とリムドライブは11月から5月まで閉鎖されるため、この期間は南口(国道62号)からのアクセスのみとなります。

全行程を走るには5〜7時間が目安とされており、ゆっくりと1日かけてドライブを楽しみましょう。駐車場はクレーター・レイクの展望地やトレイルヘッド、クラマスフォールズ市内の博物館・史跡に整備されています。夏の週末や観光シーズンは混雑が予想されるため、午前中の早めの時間に訪問するのがおすすめです。湖畔や保護区周辺の駐車エリアは未舗装の場合も多いため、車高の低い車でのアクセスは注意が必要です。また出発前には道路状況を必ず確認しておきましょう。

Volcanic Legacy Scenic Byway
Web Site: Volcanic Legacy Scenic Byway

All-American Roadとは?

全米シーニック・バイウェイ・プログラムの中で最上位に位置づけられる称号で、米国内でも限られたルートだけに与えられます。指定を受けるためには、風景の美しさだけでなく、歴史や文化、考古学的価値、レクリエーション性といった複数の資質を兼ね備えていることが条件。つまり単なる移動のための道ではなく、その道自体が「訪れることを目的とする価値」を持ち、世界的に注目される観光資源であることを評価基準としています。

・全米シーニック・バイウェイ・プログラム(America’s Byways®)

National Scenic Bywayとは?

1991年に創設された全米シーニック・バイウェイ・プログラムの下で認定される道路の総称で、地域の景観や自然環境、歴史、文化などに顕著な価値を持つことが条件。全米各地に点在するバイウェイは、それぞれが地域の特色を映し出すものであり、訪れる人に土地の個性や物語を伝える役割を果たしています。指定を受けた道路では、沿線の観光資源や文化的遺産の保護・活用も進められ、ドライバーは単に景色を眺めるだけでなく、地域の歴史や文化を体験しながら走ることができます。旅行者にとっては、アメリカの多様な風土を理解するうえで最適なルートといえるでしょう。

オレゴン州のAll-American Road & National Scenic Byway

All American Road
Historic Columbia River Highway Scenic Byway
Hells Canyon Scenic Byway
Volcanic Legacy Scenic Byway
Pacific Coast Scenic Byway

National Scenic Byway
West Cascades Scenic Byway
McKenzie Pass–Santiam Pass Scenic Byway
Mt. Hood Scenic Byway
Oregon Outback Scenic Byway
Rougue-Umpqua Scenic Byway
Cascade Lakes Scenic Byway

Web Site: Oregon State Roadmap

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