1900年代初頭、モントレー(Monterey)はイワシを中心とした漁業が活況をみせ、1940年代半ばには”世界のイワシの首都”として知られていました。その水揚げされた魚を加工する缶詰工場が建てられた場所がキャナリー・ロウ(Cannery Row)です。かつての缶詰工場を改装した建物に、地元食材を使った料理が楽しめるレストランやギャラリー、ショップの並ぶウォーターフロントエリアとして賑わっています。
モントレーの漁業ともに活況を呈していた缶詰工場が並ぶこの一帯は、1945年にスタイン・ベックがこの地で暮らす人々をモデルに書いた小説「キャナリー・ロウ(原題:Cannery Row)」によって世界的に知られることとなりました。しかし、この小説の発行からわずか5年後には漁獲量が激減し、一帯の工場は廃墟と化してしまいました。1968年にシーフードレストランThe Sardine Factoryが廃工場を改装した建物で開業したことをきっかけに再開発が進み、モントレー市はスタイン・ベックの小説に因み”キャナリー・ロウ”をこのエリアの正式な名称としました。
キャナリー・ロウを散策すると、このエリアの歴史や小説「キャナリー・ロウ」に関連するものを目にします。巨大なガラスの水槽を持つ人気のモントレーベイ水族館(Monterey Bay Aquarium)は、1900年代初めに建てられたイワシの缶詰工場を利用しており、世界有数の改造施設の一つとして知られています。また、水族館のすぐ側、キャナリー・ロウ800番地には小説の登場人物であるドク・リケッツのモデルといわれる海洋生物学者エド・リケッツが勤務していたパシフィック・バイオロジカル・ラボラトリー(Pacific Biological Laboratories)の木造の建物が、そしてレストランやショップが並ぶスタインベック・プラザ(Steinbeck Plaza )の側には小説の記念碑などもあります。
キャナリー・ロウはモントレーのダウンタウンから、クルマなら数分でアクセスすることができます。美しいモントレー湾を眺めながら海沿いの道を散策すれば、オールド・フィッシャーマンズワーフ(Old Fisherman’s Wharf)にも訪れることができます。小説の舞台にもなった歴史的産業の遺産を再生してつくられたキャナリー・ロウは、カリフォルニアの海辺の町の歴史を綴るユニークな魅力のある場所です。
Cannery Row
Address: 501 Cannery Row, Monterey, CA
Web Site: Cannery Row
photo: ©︎Brand USA