カリフォルニア州セントラルコースト、モントレー半島の南西端に位置する カーメル・バイ・ザ・シー(Carmel-by-the-Sea 以下:カーメル)。静かで穏やかな時間に包まれた人口数千人ほどの小さなこの町は、1986年から1988年まで Clint Eastwood が市長を務めたことでも知られています。
「芸術家の町」として知られるカーメルには、石造りのコテージや花に彩られた路地、緩やかなカーブを描く屋根の家々が並び、まるでおとぎ話の世界に迷い込んだかのような景観が広がっています。
この地の歴史は古く、17世紀初頭、スペインの探検隊がモントレー湾に上陸したことに始まります。当時、湾に流れ込む川が「カルメロ(Carmelo)」と名付けられたことが、町の名前の由来になったとされています。
18世紀のスペイン統治時代には、現在も現役の教区として活動を続ける Carmel Mission Basilica San Carlos Borromeo が築かれ、この地に集落が形成されました。

カーメルが現在の姿を形づくられたのは、1900年代初頭のことです。美しい海岸線と穏やかな自然環境に惹かれ、画家や詩人、作家たちが集まり、理想主義的なコミュニティを築き始めました。
1906年にサンフランシスコ大地震が発生すると、都市を離れた多くの芸術家たちがこの地に移り住み、カーメルは次第に「芸術家の町」として知られるようになります。彼らは自然と調和した暮らしを重視し、環境保護のための規制や厳格な建築基準を定めました。
イーストウッド市長の時代には、派手な看板を禁止する条例が制定されるなど、景観保護の姿勢がより明確になりました。初期の入植者たちの理念は、統一された街並みなど現在のカーメルの穏やかな佇まいの礎となって表れています。
町を歩くと、芸術性の高い建築物を数多く目にします。たとえばドロレス・ストリートに建つレストラン「The Tuck Box」は、カーメルを象徴するコテージ建築のひとつとして知られるコムストック様式の建物です。また、フランク・ロイド・ライトが設計した Della Walker House や、歴史あるホテル Pine Inn など、町の歩みと深く結びついた建築も残されています。見学可能な建物を巡りながら、芸術家たちの暮らしや文化に触れてみるのもおすすめです。


町の中心となるのは、Ocean Avenue 周辺のダウンタウンです。おとぎ話のような通り沿いには、ギャラリーやブティック、ワインテイスティングルームが点在しています。路地裏に足を踏み入れると、ひっそりとした中庭や隠れ家のようなショップが現れ、町歩きそのものがひとつの体験になります。チェーン店が少ないため、ここでしか出会えない味や品を探す楽しみもあります。

町の西端に広がる カーメル・ビーチ(Carmel Beach) も、カーメルを語るうえで欠かせない存在です。なだらかに続く白砂のビーチと糸杉のシルエット、そして夕暮れ時のサンセットは、モントレー半島でも屈指の美しさを誇ります。芸術家たちを魅了したこの景色は、朝や夕方の光の中で、とりわけ印象的な表情を見せてくれます。


カーメルへは、Highway 1(California State Route 1)を使い、サンフランシスコ(San Francisco)から約3時間、ロサンゼルス(Los Angeles)からは5時間ほどのドライブでアクセスできます。北にはモントレー(Monterey)、南にはフェイファー・ビッグサー州立公園(Pfeiffer Big Sur State Park)があり、西海岸ロードトリップの立ち寄り先としても理想的な立地です。町自体は非常にコンパクトなため、到着後は路上駐車やビーチ周辺の駐車スペースを利用し、徒歩で散策するのがおすすめです。週末や夏季は混雑しやすいため、早めの到着を心がけるとよいでしょう。
カーメル・バイ・ザ・シーは、Highway 1走るロードトリップの途中で、あえて立ち止まり、静かな時間を味わうための町です。芸術家たちが理想を求めて辿り着いたこの場所は、今もなお、旅人に自然の美しさと、穏やかに流れる時間の大切さを静かに教えてくれます。
Location / Address
photo:©CarmelCalifornia.com

