セントラルコーストの穏やかな海辺の町、ベンチュラ（Ventura）。正式名称はサン・ブエナベントゥーラ（San Buenaventura）といい、豊かな歴史と、ゆったりと時間が流れるビーチシティならではの心地よさ、そして自然の美しさに満ちています。年間の平均晴天日は約300日、日中の平均気温は年間を通じて20度前後と過ごしやすく、自然散策やサーフィンなどさまざまなビーチアクティビティを楽しむことができます。
現在の町が形づくられていくまでには、長い歴史があります。もともとこの地域にはチュマシュ族をはじめとするネイティブアメリカンが暮らしていましたが、1782年にカリフォルニア・ミッションの9番目となるミッション・サン・ブエナベントゥーラ（Mission San Buenaventura）が創建され、町の基盤が築かれました。南北戦争後には鉄道が開通し、20世紀初頭には石油産業が発展して経済が拡大。1960年代にはベンチュラ港が造成され、漁業や海洋産業が活性化するなど、町は海と共に発展していきました。肥沃なベンチュラ川とサンタクララ川の渓谷に支えられた農業も重要な産業となり、とくに柑橘類の栽培は町の発展に大きく寄与しました。世界最大級の柑橘類生産組織サンキスト（Sunkist）が誕生した背景にもつながっています。
町の中心となるダウンタウンには、歴史を今に伝える建造物が数多く残され、独特の落ち着いた雰囲気が広がります。なかでも、カリフォルニア州歴史的建造物およびアメリカの国家歴史登録財に指定されているミッション・サン・ブエナベントゥーラは、建築の美しさに加え、庭園や博物館も併設されており、町の歴史に触れるうえで欠かせない存在です。一方で、近年はアーティストやクリエイターが集まるエリアとしても注目が高まり、ギャラリーやアンティークショップが点在。2025年に30回目を迎えた「Art Walk Ventura」をはじめ、地域文化を体感できるアートイベントも行われ、伝統と創造性が調和する魅力が育まれています。
食文化もこの町の楽しみのひとつです。町で最も古いレンガ造りの商業ビルを改装した人気レストラン「Peirano’s」をはじめ、地元の食材を活かしたレストランやブルーワリー、カフェが並んでいます。毎週水曜と土曜に開催されるファーマーズマーケットでは、新鮮な野菜や果物、カリフォルニアらしい料理が並び、地元の暮らしを肌で感じられます。
海沿いへ足を運ぶと、豊かな自然環境を存分に味わえます。白い砂浜が広がるビーチは開放感にあふれ、雄大な太平洋へ向かって伸びるベンチュラ・ピア（Ventura Pier）は朝夕の散歩や釣りを楽しむ地元の人々でにぎわう場所です。晴れた日にはチャンネル諸島（Channel Islands）が浮かび、太平洋の広がりを感じる絶景が広がります。年間を通して質のよい波が立つため、サーファーにとっても人気のスポットです。
さらに海の魅力を深く味わいたいなら、ベンチュラ港（Ventura Harbor）へ向かってみましょう。レストランやギフトショップが集まるヴェンチュラ・ハーバー・ヴィレッジ（Ventura Harbor Village）は、食事やショッピングに加え、カヤックやSUPなどのアクティビティも盛んです。ここからは手つかずの自然が残るチャネル諸島国立公園（Channel Islands National Park）へのボートトリップが出航しており、ベンチュラが「アイランド・ゲートウェイ」と呼ばれる理由を実感できます。
港エリアを満喫したあとは、町を見渡す絶景スポットへ。港からダウンタウン側へ戻り、クルマで山側へ約5分進むと、「ラ・ロマ・デ・ラ・クルス」と呼ばれる丘の上に立つセラ・クロス（Serra Cross）に到着します。ミッション建設時に十字架が掲げられたとされる歴史的な場所で、ベンチュラの町並みと太平洋を一望できるスポットとして知られています。特に夕暮れ時には空と海が美しく染まり写真スポットとしても人気です。
ベンチュラはクルマでのアクセスが良好で、ロサンゼルス（Los Angeles）からは約 1 時間半、サンタバーバラ（Santa Barbara）まではわずか 30 分と便利な立地です。ダウンタウンにはストリートパーキングや市営駐車場が多く、ビーチ沿いにも広い駐車場が整備されています。早朝や平日であれば海辺をゆったりと散策でき、周辺の海沿いルートと組み合わせたロードトリップにも適しています。サンタバーバラやオーハイ（Ojai）へのアクセスもよいことから、セントラルコーストを巡る旅の拠点としてもおすすめの町です。
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photo:©Visit California/Carol Highsmith ©plusroadtrip