ポートランド（Portland）のダウンタウンを流れるウィラメット川沿いに広がるトム・マッコール・ウォーターフロント・パーク（Tom McCall Waterfront Park）は、都市と自然が調和する「緑の町ポートランド」を象徴する場所です。遊歩道と芝生エリアが続く全長約1.5マイル（約2.4km）の園内では、ジョギングやサイクリングを楽しむ人々が行き交い、ポートランドらしい穏やかな日常風景を感じることができます。
この公園が誕生したのは1978年。かつてこの場所には、ウィラメット川沿いを走る6車線の高速道路がありました。1969年に公共空間の不足を訴えた市民運動をきっかけに撤去が決まり、その跡地に緑豊かな公園が整備されました。都市の中心部に自然を取り戻したこの試みは、環境と人の共存を重視するポートランドの都市づくりを象徴するものです。1984年には、環境保護政策を推進したオレゴン州知事トム・マッコール（Tom McCall）にちなんで、現在の名称が付けられました。
園内にはいくつかの見どころがあります。夏の子どもたちの遊び場として人気のサーモン・ストリート・スプリングス（Salmon Street Springs）は、1988年に完成したインタラクティブな噴水です。地下に設置されたコンピューターによって185本の噴流が制御され、3種類のパターンで水が踊るように吹き上がります。 また、川沿いにはアメリカで最後に稼働した蒸気動力の船尾外輪タグボートが保存されているオレゴン海洋博物館（Oregon Maritime Museum）があります。館内では船の操舵室や機関室を見学することができ、かつての川の交通の歴史を学べます。さらに、観光案内所として利用されているローズ・ビル（Rose Building）も立ち寄りたいスポットです。1948年にポートランドの著名な建築家ジョン・イェン（John Yeon）が設計したこの建物は、北西部モダニズム建築の代表作として知られています。
公園からはポートランドを代表する複数の橋を望むことができます。南側には、1908年完成の鋼鉄製リフトブリッジとして知られるホーソーン・ブリッジ（Hawthorne Bridge）。北に進むと、上下2層構造で鉄道と車道を分けるスティール・ブリッジ（Steel Bridge）が現れます。どちらもポートランドの歴史を語る貴重な存在で、工業美と都市景観が融合した絶景です。夕方には橋のシルエットが川面に映り込み、写真撮影にも人気のスポットです。
ここでは年間を通じてさまざまなイベントが開催されます。3月から12月の週末には、公園北端で開かれるPortland Saturday Marketが人気で、ローカルアーティストによるクラフト作品やフードトラックのグルメなど、ポートランドらしい自由でクリエイティブな雰囲気を楽しめます。夏にはクラフトビールをテーマにしたOregon Brewers Festivalや、全米でも有名なWaterfront Blues Festivalが開催され、音楽と人の活気にあふれる季節を迎えます。
さらに、公園内には日本との深い関わりを示すエリアもあります。第二次世界大戦中に強制収容された日系アメリカ人の歴史を記念する日系アメリカ人記念広場（Japanese American Historical Plaza）では、日米友好の証として植えられた約100本の桜が春になると満開を迎え、多くの人々が花見を楽しみに訪れます。
トム・マッコール・ウォーターフロント・パークの営業時間は午前5時から深夜0時まで。公園周辺には駐車場が点在しており、車で訪れてダウンタウン散策を楽しむ拠点としても便利です。徒歩圏内にはパイオニア・コートハウス・スクエア（Pioneer Courthouse Square）やオールド・タウン（Old Town）などの観光名所もあります。
緑の町ポートランドを象徴するトム・マッコール・ウォーターフロント・パークは、町の歴史と人々の日常が交差する場所です。ウィラメット川の風を感じながら歩けば、この町が大切にしてきた「人と自然の調和」という思想を実感できるでしょう。ポートランド（Portland）滞在の際には、ぜひ訪れておきたいスポットのひとつです。
Location / Address
Official Web Site: Tom McCall Waterfront Park
photo:© Travel Portland ©Andrea Johnson Photography ©Justin Katigbak, Travel Portland ©Ashley Anderson, Travel Portland ©Jon Kraft ©Diego Diaz ©NASHCO Phot