都会的な雰囲気とビーチタウンの雰囲気を併せ持つロングビーチ(Long Beach)のランドマーク的存在になっているクイーン・メアリー号(The Queen Mary)は、かつて世界最大級、そして世界最速を誇った豪華客船。イギリス国王ジョージ5世の王妃クイーン・メアリーの名を冠した全長305メートル、重さ73,482トンもあるこの船は、サウサンプトン – シェルブール – ニューヨークと北大西洋を横断するオーシャンライナーでした。現役引退後の1967年にロング・ビーチで静態保存されることになったクイーン・メアリー号は、船の博物館として、また豪華な客室と素晴らしいバーやレストランを備えたホテルとして世界中の観光客に愛されています。

クイーン・メアリー号は1930年から約3年半の年月をかけてつくられました。船内は美しいアール・デコ調のデザインが施され、壁画、絵画、彫刻などの芸術作品なども飾られており、その船内には5つのダイニングエリアとラウンジ、2つのカクテルバー、プール、グランドボールルーム、スカッシュコート、そして小さな病院まで備えられていました。ボブ・ホープやクラーク・ゲーブルなどのハリウッドセレブ、ウィンザー公爵夫妻などの王族、ウィンストン・チャーチルなどの要人など多くの富裕層がこの船を利用していたといいます。またクイーン・メアリー号は単に豪華な客船ではありませんでした。当時の世界最高の速度記録を持つほどの高速船で、1938年に記録した最高速度は14年間破られることはありませんでした。初航海から3年後に第二次世界大戦が始まると、その性能の高さからイギリス海軍によって軍の輸送船として活躍し、豪華な設備は取り除かれ、迷彩色のグレーに塗られた船体が高速で航海をすることから「グレイ・ゴースト」と呼ばれていました。戦後を迎えると、クイーン・メアリー号は元の美しい姿に改装され、1947年から再び北大西洋を横断するオーシャンライナーとして運行され、旅の交通手段が飛行機へと変わるまでの約20年間航海を続けました。そして1967年よりロングビーチで静態保存されています。

ロングビーチでの滞在を考えているのであれば、この歴史的豪華客船での宿泊は素晴らしい体験になるでしょう。200室の客室は、アールデコ調の調度品やアート作品の装飾などが配備され、往年のセレブリティが楽しんだ優雅な時間を体験することができます。サンセットタイムには、かつてファーストクラス・ラウンジだった場所につくられたオブザベーション・バー(Observation Bar & Art Deco Lounge)で夕日を眺めながらカクテルを楽しみましょう。イギリスのチャウダーハウスの雰囲気を再現したチェルシー・チャウダー・ハウス&バー(Chelsea Chowder House & Bar)へ足を運んでみるのもオススメです。

もちろん、宿泊をしなくてもクイーン・メアリー号は素晴らしい思い出がつくれる場所です。船内は船首から船尾まで船内外のあらゆる場所が公開されおり、セルフ・ガイドで自由に見学することができるからです。より深くこの船のことを知りたいのであれば、博物館が主催する専門ガイド(英語)によるツアーに参加してみましょう。画期的とされた船の建造に関する話やこの船が辿った歴史を知る「The Glory Days」、この船の幽霊現象や伝説が生まれた場所を巡る「Haunted Encounters」といったツアーはとても人気があります。船内は4D Theaterやこの船と深い縁を持つイギリスの首相チャーチルに纏わる展示など見どころも多いので、博物館の見学に訪れる場合は、時間に余裕を持って訪れると良いでしょう。

またこの船では、年間を通じてさまざまなイベントが開催されています。コメディナイト、ワインテイスティング・ディナー、ライブミュージック・パフォーマンスといった日々のイベントだけでなく、毎年2月に開かれるスコットランドのクライドバンクで建造された歴史を祝うScots Festival and International Highland Gamesや日曜に開催される世界各国の50種類以上料理が楽しめるQueen Mary Royal Sunday Brunchなどの定期イベントもあります。訪問前に公式サイトのカレンダーでイベントの確認をしておきましょう。

The Queen Mary
Address: 1126 Queens Hwy, Long Beach, CA
Web Site: The Queen Mary

photo: ©️Visit California