オレゴン南部の高地砂漠地帯を縦断するアウトバック・シーニック・バイウェイ(Oregon Outback Scenic Byway)は、デシューツ国有林(Deschutes National Forest)からカリフォルニア州境の町ニューパインクリーク(New Pine Creek)まで続く、全長約170マイル(約270km)の景観道路です。州道31号(OR-31)を中心に、ロッキー山脈とシエラネバダ山脈の間に広がる乾燥地帯グレートベースン(Great Basin)の荒涼とした大地を走り抜けるルートで、National Scenic Byway に指定されています。
アウトバック・シーニック・バイウェイはベンド(Bend)から南へ約30マイル(48km)の町ラパイン(La Pine)から始まります。U.S.ルート97号(U.S. Route 97)を経て州道31号へと進むとデシューツ国有林へと入り、ロッジポールパインやポンデローサパインが並ぶ森の中へ。さらに南下すると、やがてオーストラリアのアウトバックを思わせる広大なセージブラシ平原へと辿り着きます。風景の劇的な変化を感じながら、数マイル先のカウンティロード5-10(County Rd 5-10)へと進むと、目の前に神秘的な奇岩フォートロック(Fort Rock)が現れます。まるで要塞のようにそびえ立つその岩壁は高さ約100mにもなる火山性クレーターで、国立天然記念物に指定されています。周辺にはトレイルやピクニックエリアが整備されたフォートロック州立ナチュラルエリア(Fort Rock State Natural Area)や、19世紀の開拓時代の建物を移築保存するフォートロック・ホームステッド・ビレッジ(Fort Rock Homestead Village Museum)などの見どころもあります。

再び州道31号に戻り、シルバー・レイク(Silver Lake)を過ぎると、標高1472mのピクチャー・ロック・パス(Picture Rock Pass)へと入ります。峠の周辺にはネイティブアメリカンが残した岩絵(ペトログリフ)が点在し、徒歩で見学することもできます。晴れた日にはこの付近からカスケード山脈のスリー・シスターズを遠望することができます。

峠を越えると、風景は再び大きく変わり、目の前に約18,000エーカー(約7300ha)におよぶ湿地帯、サマー・レイク野生動物保護区(Summer Lake Wildlife Area)の広大な湿原が現れます。ここは太平洋フライウェイにおける渡り鳥の重要な中継地で、ハクトウワシやアメリカハヤブサなどを含む約250種の鳥類が確認されています。先に見えるサマー・レイク(Summer Lake)は浅いアルカリ湖で、時には完全に干上がることもあります。


さらに南へ進むと、ニジマスや在来種のレッドバンドトラウトが生息するチェワウカン川(Chewaucan River)が流れ、北米最古の人類遺跡のひとつとして知られるペイズリー洞窟(Paisley Caves/非公開)で有名な町ペイズリー(Paisley)を通過します。やがて、全米最大級の牧場のひとつZX牧場の牧草地帯を望みながら走ると、U.S.ルート395号(U.S. Route 395)との合流地点となるバレーフォールズ(Valley Falls)に到着します。東側には高さ約2500フィート(約762m)、長さ約48kmにもおよぶ北米最大の露出断層崖アバート・リム(Abert Rim)が圧倒的な存在感を放ちます。
少し寄り道をしてU.S.ルート395号を左折すれば、オレゴン州唯一の塩水湖アバート湖(Lake Abert)へもアクセス可能です。湖畔にはレイク・アバート&アバート・リム・ワチェーブル野生動物保護区(Lake Abert & Abert Rim Watchable Wildlife Area)があり、湖全体とアバート・リムの雄大な岸壁を一望できます。アバート・リム南端はハンググライダーの名所としても知られています。
レイク・アバートからバレーフォールズに戻り、U.S.ルート395号を南下すると、「オレゴンで最も高い町(Oregon’s Tallest Town)」と呼ばれるレイクビュー(Lakeview)へ。標高1463mに位置し、「西のハンググライダーの首都(Hang Gliding Capital of the West)」を自称しています。夏にはブラックキャップ(Black Cap)と呼ばれる丘からグースレイク渓谷を一望でき、冬にはスキーやスノーモービルも楽しめます。北東65 マイル(約105km)のところにハートマウンテン国立アンテロープ保護区(Hart Mountain National Antelope Refuge)があり、北米で最も足の速い陸生哺乳類プロングホーンなど高地砂漠の野生動物たちに出会える貴重な場所として知られています。そして、レイクビューから15マイル(約24km)ドライブすると、終着点のニューパインクリークに到着します。


アウトバック・シーニック・バイウェイは、森林から乾燥地、湖や湿地、断崖絶壁まで、オレゴンの多様な自然環境を一度に体験できるルートです。都市部からは距離があり、観光施設も少ないですが、地平線から地平線まで広がる高地砂漠の繊細な美しさの広大な風景を眺めるドライブは、慌ただしい日常の喧騒を吹き飛ばすような体験を味わせてくれるでしょう。
ロードトリップ計画のポイント
オレゴン州の人里離れた高地砂漠を走るこのルートの所要時間は、おおよそ4〜6時間が目安です。沿道の湖は太平洋フライウェイを移動する水鳥たちの休息地となっており、バードウォッチングにも最適です。ベストシーズンは6月から10月。冬季は雪が降ることもあり、夏は気温が30度を超える日もあります。途中に小さな町や集落はありますが、ガソリンや軽食などは事前に準備して出発すると安心です。
Oregon Outback Scenic Byway
Web Site: Oregon Outback Scenic Byway
All-American Roadとは?
全米シーニック・バイウェイ・プログラムの中で最上位に位置づけられる称号で、米国内でも限られたルートだけに与えられています。指定を受けるためには、風景の美しさだけでなく、歴史や文化、考古学的価値、レクリエーション性といった複数の資質を兼ね備えていることが条件。つまり、単なる移動のための道ではなく、その道自体が「訪れることを目的とする価値」を持ち、世界的に注目される観光資源であることを評価基準としています。
National Scenic Bywayとは?
1991年に創設された全米シーニック・バイウェイ・プログラムの下で認定される道路の総称で、地域の景観や自然環境、歴史、文化などに顕著な価値を持つことが条件。全米各地に点在するバイウェイは、それぞれが地域の特色を映し出すものであり、訪れる人に土地の個性や物語を伝える役割を果たしています。指定を受けた道路では、沿線の観光資源や文化的遺産の保護・活用も進められ、ドライバーは単に景色を眺めるだけでなく、地域の歴史や文化を体験しながら走ることができます。旅行者にとっては、アメリカの多様な風土を理解するうえで最適なルートといえるでしょう。
オレゴン州のAll-American Road & National Scenic Byway
All American Road
Historic Columbia River Highway Scenic Byway
Hells Canyon Scenic Byway
Volcanic Legasy Scenic Byway
Pacific Cast Scenic Byway
National Scenic Byway
West Cascades Scenic Byway
McKenzie Pass–Santiam Pass Scenic Byway
Mt. Hood Scenic Byway
Oregpn Outback Scenic Byway
Rougue-Umapqua Scenic Byway
Cascade Lakes Scenic Byway

Web Site: Oregon State Roadmap
photo: ©Travel Southern Oregon

