マウント・フッド・シーニックバイウェイ(Mt. Hood Scenic Byway)は、オレゴン州を象徴する名峰マウント・フッド(Mt. Hood)の周囲を巡る全長105マイル(約169km)のルートで、National Scenic Byway に指定されています。
オレゴン州で最も高い3,429mの標高を誇るマウント・フッド。その頂から放射状に広がる氷河が眺めながらドライブを楽しめるのがこのシーニックバイウェイの特徴です。ドライブの起点はコロンビア川渓谷の町フッド・リバー(Hood River)。州道35号線(OR-35)を南へと車を走らせ、果樹園と森林を抜けながらマウント・フッドの東側を回り込み、最終的にポートランド近郊の町トラウトデール(Troutdale)がこのルートの終着地。春は一面の野の花を眺め、夏はハイキングや湖畔のアクティビティを、秋には紅葉を堪能し、冬はスキーを存分に楽しむなど、訪れる季節ごとに異なる楽しみ方ができます。

フッド・リバー(Hood River)は、ウィンドサーフィンとフルーツの産地として知られる町です。州道35号(OR-35)の一部は「フルーツ・ループ(Fruit Loop)」と呼ばれる周遊道路と重なり、リンゴやサクランボの花が咲く春や、収穫を祝う秋には地元の活気に包まれます。沿道ではフルーツを使ったサイダーやパイなどのローカルフードも楽しめ、このエリアならではの風景と味覚が旅を彩ります。


やがてルートはマウント・フッド国有林(Mt. Hood National Forest)の深い森へと入り、標高が上がるにつれて景観が一変します。バイウェイは西へとカーブを描き、マウント・フッド・メドウズ・スキーリゾート(Mt. Hood Meadows Ski Resort)を過ぎてホワイトリバー橋に差し掛かるとマウント・フッドの山頂と荒涼とした灰色の川床の壮観な景色が広がります。
ほどなくして現れるバーロウ・パス(Barlow Pass/標高4,155フィート=1,266m)は、オレゴン・トレイルの最終区間 に位置し、19世紀に多くの開拓者が苦難の末に越えた歴史的な峠。解説板や旧道跡が残り、当時の旅の厳しさを感じ取ることができます。周辺にはキャンプ場やトレイルも整備され、自然と歴史を同時に体感できるエリアです。


さらに進むと州道35号(OR-35)はUSルート26号線(US Highway 26)と合流します。ここから少し寄り道をして、マウント・フッドを正面に望むトリリアム湖(Trillium Lake)へ立ち寄るのもおすすめです。早朝の静かな湖面に映る“逆さフッド”は、写真家にも人気の高い絶景スポットとして知られています。
もうひとつ見逃せないのが、標高約1,800mに建つティンバーライン・ロッジ(Timberline Lodge)です。1937年に建てられた歴史あるロッジで、国定歴史建造物 に指定されています。映画『シャイニング(The Shining)』の外観撮影地としても有名で、年間を通してスキーが楽しめるオレゴンを代表する観光地のひとつです。



ティンバーライン・ハイウェイを下って再びUSルート26号線に戻ると、ガバメントキャンプ(Government Camp)の小さな町が現れます。ここからはマウント・フッド南麓の景観を楽しみながら、ローデンドロン、ジグザグ、ウェルチズ、ブライトウッドといった村々を抜けて西へと進みます。かつてオレゴン・トレイルの旅人たちが苦労して越えたこの急勾配の道は、今では美しい森と川に囲まれた穏やかなドライブルートとなっています。
ルート終盤のサンディ川流域では、急流に沿って道が続きます。このエリアは釣りやラフティングの拠点としても人気で、途中には滝や展望台が点在。特にサンディ(Sandy)の町近くにあるジョンスルード展望台(Jonsrud Viewpoint)では、マウント・フッドとサンディ川渓谷を一望できます。やがて道はコロンビア川渓谷へと戻り、出発点のフッド・リバーとは反対側の町トラウトデールでループが完成します。
マウント・フッド・シーニックバイウェイは、氷河を抱く高峰、鏡のような湖、深い森、そして開拓史を物語る峠をめぐる、オレゴンを代表するドライブルートです。ポートランド(Portland)からアクセスしやすく、日帰りのドライブから数日の滞在まで、四季を通じて多彩な楽しみ方ができる人気ルートになっています。

ロードトリップ計画のポイント
マウント・フッド・シーニックバイウェイは、一年を通してさまざまな表情を見せてくれます。全行程は約3〜4時間、観光や立ち寄りを含めれば5〜7時間が目安です。湖や展望台、沿道の小さな村々に立ち寄りながら1日かけてゆっくり巡るのがおすすめ。ポートランドからフットリバーまでは、ヒストリック・コロンビアリバー・シーニック・バイウェイ(Historic Columbia River Highway Scenic Byway)を経由して1時間ほどの距離。そのままマウント・フッド・シーニックバイウェイのドライブに出かけるのもよいですが、この町の滞在を組み合わせるのもよいでしょう。
晩秋から春先にかけては、積雪や凍結によるチェーン規制・通行止めが発生することもあるため、出発前には最新の道路情報を確認しましょう
Mt. Hood Scenic Byway
Web Site: Mt. Hood Scenic Byway
All-American Roadとは?
全米シーニック・バイウェイ・プログラムの中で最上位に位置づけられる称号で、米国内でも限られたルートだけに与えられています。指定を受けるためには、風景の美しさだけでなく、歴史や文化、考古学的価値、レクリエーション性といった複数の資質を兼ね備えていることが条件。つまり、単なる移動のための道ではなく、その道自体が「訪れることを目的とする価値」を持ち、世界的に注目される観光資源であることを評価基準としています。
National Scenic Bywayとは?
1991年に創設された全米シーニック・バイウェイ・プログラムの下で認定される道路の総称で、地域の景観や自然環境、歴史、文化などに顕著な価値を持つことが条件。全米各地に点在するバイウェイは、それぞれが地域の特色を映し出すものであり、訪れる人に土地の個性や物語を伝える役割を果たしています。指定を受けた道路では、沿線の観光資源や文化的遺産の保護・活用も進められ、ドライバーは単に景色を眺めるだけでなく、地域の歴史や文化を体験しながら走ることができます。旅行者にとっては、アメリカの多様な風土を理解するうえで最適なルートといえるでしょう。
オレゴン州のAll-American Road & National Scenic Byway
All American Road
Historic Columbia River Highway Scenic Byway
Hells Canyon Scenic Byway
Volcanic Legasy Scenic Byway
Pacific Cast Scenic Byway
National Scenic Byway
West Cascades Scenic Byway
McKenzie Pass–Santiam Pass Scenic Byway
Mt. Hood Scenic Byway
Oregpn Outback Scenic Byway
Rougue-Umapqua Scenic Byway
Cascade Lakes Scenic Byway

Web Site: Oregon State Roadmap
photo: © Brand USA ©Travel Oregon (photographer: Katie Falkenberg) ©Visit Hood River © Katie Falkenberg © plusroadtrip