カスケード・レイクス・シーニック・バイウェイ(Cascade Lakes Scenic Byway)は、オレゴン州中部の都市ベンド(Bend)の西側からカスケード山脈の山岳地帯へと延びる、全長約66マイル(約106km)の景観道路です。National Scenic Byway に指定されており、雪をいただく山々と、氷河や火山活動によって形成された12の主要な湖をはじめとする湖沼群を巡るルートとして知られています。 オレゴンの自然の多様性と地質学的な魅力を存分に楽しむことができる絶景ドライブコースです。
このバイウェイの魅力は、壮大な景観だけではありません。カスケード山脈を背景に、釣りやボート、ハイキング、ロッククライミング、そして冬季にはアルペンスキーやノルディックスキーなど、多彩なアウトドア・レクリエーションが楽しめます。カスケード山脈が太平洋からの湿った空気を遮るため、年間およそ250日が晴天という穏やかな気候にも恵まれていることでも知られています。
カスケード・レイクス・シーニック・バイウェイは「センチュリー・ドライブ(Century Drive)」とも呼ばれます。その理由は、かつて馬車が使われていた時代に赤い噴石(シンダー)を敷いた環状の未舗装道路が100マイルにわたって延びていたことに由来しています。現在のバイウェイはそのルートの一部を引き継いでおり、セントラルオレゴンの人々の歴史にも触れるルートでもあります。

出発点となるベンド(Bend)は、カスケード山脈の東麓に位置するセントラル・オレゴンの中心都市。年間を通してアウトドアを楽しめる人気の拠点です。市街地を流れるデシューツ川(Deschutes River)沿いには、人気クラフトビールブランドのブルワリーやショップ、レストランが並びます。ダウンタウン北側のドレイク・パーク(Drake Park)や、製紙工場跡地を再開発したオールド・ミル・ディストリクト(Old Mill District)など、自然と都市が調和した風景も魅力です。


そんなベンドをスタートしたら、サウスウェスト・センチュリー・ドライブ(Southwest Century Drive)から州道372号線(OR-372)に入り、マウント・バチェラー(Mt. Bachelor)方面へと、デシューツ国有林(Deschutes National Forest)の森の中をゆるやかに上っていきます。
森林地帯に入るとすぐに、ディロン滝(Dillon Falls)やベンハム滝(Benham Falls)など、デシューツ川沿いに点在する滝への分岐が現れます。さらに西へ進むと、火山活動によって形成された巨大な溶岩流が道路沿いに広がり、この地域の地質的な特徴を間近に感じることができます。沿道に広がるポンデローサマツの森は、カスケード山脈東斜面ならではの風景です。

標高を上がるにつれ、森林はマツやモミ、ツガが混在する深い森へと変化し、やがて視界の先に標高2764mのバチェラー山(Mt. Bachelor)が雄大に姿を現します。ここから分岐を進むと、オレゴン最大規模を誇るマウント・バチェラー・スキーリゾート(Mt. Bachelor Ski Resort)へアクセスできます。標高差約1,000m、面積3,700エーカーのスキーエリアは例年6月頃までオープンしており、夏季にはリフトで標高2,700m付近まで上がり、山頂ロッジからカスケード山脈の絶景を楽しむことができます。
バイウェイに戻り、ダッチマン・フラット(Dutchman Flat)へと下ると、侵食によって火口内部が露出した珍しい成層火山、ブロークン・トップ(Broken Top)が見えてきます。火山と氷河がつくり出した地形を象徴する山で、周辺には大小の湖が点在します。その中でも代表的なのがスパークス湖(Sparks Lake)。およそ100ヘクタールに広がる湖は、サウス・シスター(South Sister)を映す鏡のような湖面と、溶岩台地を縁取る荒々しい地形が織りなす絶景で知られています。オレゴン州を代表する写真家レイ・アトキソン(Ray Atkeson)が愛した景勝地としても有名で、彼の名を冠したハイキングトレイルも整備されています。なお、湖へのアクセス道は未整備の砂利道のため、5月下旬〜6月上旬は車高の低い車両は通行できない可能性があります。


さらに数マイル先にあるデビルズ湖(Devils Lake)は、エメラルドグリーンの透明な水をたたえる小さな湖です。周囲にはデビルズヒルから流れ出た溶岩の塊が点在し、かつてネイティブ・アメリカンが野営地として利用していた痕跡や数千年前の絵文字も発見されるなども発見されています。1960年代にはNASAの宇宙飛行士がここで月面探査訓練を行い、アポロ15号の乗組員がこの地で採取した石を月に持ち込んだという逸話も残されています。


ルートをさらに南下すると、エルク湖(Elk Lake)やホスマー湖(Hosmer Lake)など、バチェラー山を映す湖が続きます。どちらもボートや釣り、カヌーなどが人気で、エルク湖周辺にはキャビンやキャンプ場、マリーナ、レストランなどが整備されています。その先にはラバ湖(Lava Lake)とリトル・ラバ湖(Little Lava Lake)があり、後者はデシューツ川の源流として知られています。ここからおよそ400km北流し、最終的にコロンビア川へと合流します。
リトル・ラバ湖から南へ約13マイル(約21km)進むと、クレーン・プレイリー貯水池(Crane Prairie Reservoir)に到着します。ここは10ポンド(約4.5kg)を超える大型ニジマス「クレーンボウ(Cranebow)」が生息する釣りの名所です。東岸はミサゴ(Osprey)の保護区となっており、カナダヅルなどの野鳥も観察できるため、バードウォッチングのスポットとしても人気があります。さらに南へ進み、バイウェイ最後の湖のデイビス湖(Davis Lake)を過ぎ、州道58号線(OR-58)との合流点でルートは終点を迎えます。
カスケード・レイクス・シーニック・バイウェイは、全長66マイルと日帰りでも十分に楽しめる距離ながら、火山の荒々しい地形から穏やかな湖畔、雄大な山岳リゾートまで、変化に富んだ風景が続きます。スキーやハイキング、カヌー、フィッシングなど多彩なアクティビティとともに、オレゴンの自然の豊かさを体感することもできるルートです。晴天率の高い夏から秋にかけて、自然とともに過ごす時間を計画してみてはいかがでしょうか。
ロードトリップ計画のポイント
セントラル・オレゴンの自然を満喫できるこのルートの走行時間は、おおよそ3〜5時間が目安です。ベストシーズンは6月〜10月で、冬季はマウント・バチェラー以西が閉鎖されます。未舗装区間もあるため、春先などは道路状況を事前に確認しておくと安心です。
また、沿線は自然保護区に指定されており、施設の訪問時には Annual Northwest Forest Pass や America the Beautiful Pass などのレクリエーションパスが必要になる場合があります。これらのパスはベンド市内のREIストアや、Cascade Lakes Welcome Station(季節営業) のほか、オンラインでも購入可能です。
Cascade Lakes Scenic Byway
Web Site: Cascade Lakes Scenic Byway
オレゴン州のAll-American Road & National Scenic Byway
All American Road
Historic Columbia River Highway Scenic Byway
Hells Canyon Scenic Byway
Volcanic Legacy Scenic Byway
Pacific Coast Scenic Byway
National Scenic Byway
West Cascades Scenic Byway
McKenzie Pass–Santiam Pass Scenic Byway
Mt. Hood Scenic Byway
Oregon Outback Scenic Byway
Rogue–Umpqua Scenic Byway
Cascade Lakes Scenic Byway

Web Site: Oregon State Roadmap
photo:© Cody Rheault , Visit Central Oregon © Jonathon Chandler , Visit Central Oregon © Visit Central Oregon © Travel Oregon (photographer: Katie Falkenberg)

