オレゴン州最高峰のマウント・フッド(Mt. Hood)は、標高3429mの美しい成層火山で、ポートランド(Portland)の町からもその雄大な姿を望むことができます。オレゴン・セブン・ワンダーズ(Oregon’s Seven Wonders)のひとつにも数えられるこの山は、年間を通して多彩なアウトドアが楽しめる地元の人々や観光客にとって特別な存在であり、オレゴンを代表するランドマークとして親しまれています。
マウント・フッドは約1100万〜1400万年前に形成されたとされており、12の氷河とコロンビア川に流れ込む5つの川の源となっています。先住民のマルトノマ族には「ワイイースト」と呼ばれているこの山は、1792年にイギリス探検隊の隊員のひとりウィリアム・ブロートンによって「マウント・フッド」と命名されました。のちにルイス&クラーク探検隊もこの地域を通過し、その存在はより広く知られるようになりました。20世紀に入ると、マウント・フッドはスキーリゾートとしての開発が進み、周辺の森林の整備やシーニックバイウェイの建設も行われ、アウトドア愛好家の拠点となっていきます。

マウント・フッド周辺には、見どころが数多く点在しています。とりわけ有名なのが、山の南側に建つ「ティンバーライン・ロッジ(Timberline Lodge)」です。1937年に完成したこの歴史的なロッジは、アメリカ国家歴史登録財にも指定されており、映画『シャイニング』のロケ地としても知られています。館内には、歴史的な建築美と木のぬくもりが調和した落ち着いた空間が広がり、レストランやラウンジも充実しています。
アクティビティとしては、冬季のスキー・スノーボードが特に人気です。ティンバーライン・ロッジ直結のスキー場は、アメリカで唯一通年営業しているスキーエリアで、夏でもスキーを楽しむことができます。夏から秋にかけては、ハイキングが人気です。山をぐるりと囲む「ティンバーライン・トレイル(Timberline Trail)」をはじめ多彩なルートが整備されており、初心者から上級者まで楽しめます。



また、山のふもとには景観スポットも充実しています。トリリウム湖(Trillium Lake)やミラー湖(Mirror Lake)では、湖面に映る逆さマウント・フッドの姿が見られることもあり、撮影スポットとしても高い人気を誇ります。季節によっては、周辺に咲く野花や紅葉が彩りを添え、訪れるたびに異なる表情を見せてくれます。
マウント・フッド・シーニック・バイウェイ(Mt. Hood Scenic Byway)は、果樹園の谷や深いモミの森を抜けてマウント・フッドの周りを巡る全長約100マイル(約161km)の絶景のドライブルートです。コロンビア渓谷沿いの美しい町フッド・リバー(Hood River)を出発し、のどかな果樹園が広がる「フルーツ・ループ」をドライブ。さらに、マウント・フッド国有林(Mount Hood National Forest)の中を進むと、山頂近くにあるティンバーライン・ロッジへと到着します。そこからガバメント・キャンプ(Government Camp)の町を通り、広大なサンディ川渓谷を見渡すジョンスルード展望台(Jonsrud Viewpoint)で絶景を楽しんだら、ベリー類の農園が並ぶ農業地帯を抜けて都会のアクティビティとアウトドアが楽しめるグレシャム(Gresham)の町へと続いていきます。ルートの主なビューポイントやトレイルヘッド、ロッジには駐車場も整備されており、安心してロードトリップを楽しむことができます。ただし、冬季から春にかけては積雪やチェーン規制がかかることもあるため、天候情報を事前に確認しておくとよいでしょう。



雄大な自然、豊かな歴史、そして一年を通して楽しめるアクティビティがそろったマウント・フッドは、オレゴンを旅するうえで外せない魅力的なスポットです。ポートランド(Portland)からも2時間とかからずアクセス可能で、四季折々の風景に出会えるオレゴン州のロードトリップに、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。
Mt.Hood
Web Site: Mt.Hood
photo: © Brand USA © Brooke Weeber for Travel Oregon © KURUMAG