ルーカス氏自身が語るLucas Museum of Narrative Artに込めた“物語の美術館”構想

映画『スター・ウォーズ』の生みの親ジョージ・ルーカス氏とメロディ・ホブソン氏が共同創設した「ルーカス・ミュージアム・オブ・ナラティブ・アート(Lucas Museum of Narrative Art)」は、コミック、絵画、映画、写真、デジタルメディアなど、時代やジャンルを超えた“物語を語るアート”に焦点を当てた世界初の美術館として、2026年に開館します。

そのオープンに先立ち、2025年7月27日にサンディエゴで開催されたComic-Con International(通称コミコン)の会場にて、ミュージアムの構想を紹介する特別パネル「Sneak Peek: Lucas Museum of Narrative Art」が行われました。モデレーターを務めたのは歌手であり女優でもあるクイーン・ラティファ。登壇者には、ジョージ・ルーカスに加え、ヘルボーイやブレイド2の監督を務めたことでも知られるギレルモ・デル・トロ、そしてルーカス・フィルムのシニア・バイス・プレジデント兼エグゼクティブ・デザイン・ディレクターであるダグ・チャン(江道格)が名を連ね、6000人を超える観客から大きな注目を集めました。

ルーカスは、「社会は共通の信念体系なしには成り立ちません。それが日常生活においてどのような意味を持つのかを示すためには、イラストレーションが不可欠なのです。この美術館は“人々のアート”の殿堂であり、社会の共通の価値観を視覚化する手段となるでしょう」と語り、自身の50年以上にわたるナラティブ・アート収集への情熱を明かしました。

また、デル・トロは「もし音楽がクラシックだけで、ロックンロールが存在しなかったら? それくらいこのミュージアムはカルチャーにとって不可欠な存在なのです」と話し、ナラティブ・アートの社会的意義を力強く語りました。

さらに、ルーカス・フィルムのダグ・チャンは、「コミックアートや雑誌のイラストは、私にとってアートを楽しみ、学ぶための入口でした。ジョージとメロディがこの美術館でやろうとしていることの素晴らしさは、これまで十分に評価されてこなかったアーティストたちに敬意を表している点にあります」と述べ、若い世代が多様なビジュアル表現に触れる重要性を強調しました。

パネル内では、クイーン・ラティファがいくつかの代表的な展示作品についても言及。『フラッシュ・ゴードン』の初期コミック・ストリップ、『ブラックパンサー』(1968年)のオリジナル・スプラッシュ・ページ、1950〜60年代の『ピーナッツ』のストリップなどが紹介され、展示の幅広さと深さを印象づけました。また、ルーカスの映画制作に関するアーカイブとして、小道具、コンセプトアート、衣装なども一般公開される予定であることが明かされました。

一方で、建築面でも大きな注目を集めている同館の外観は、中国人建築家マ・ヤンソン(MADアーキテクツ)が設計を担当しています。波打つような曲線が特徴的な建物は、未来的でありながら自然との調和を感じさせるデザインとなっており、建築作品としても話題を呼んでいます。ロサンゼルス自然史博物館やLA Memorial Coliseumに隣接する11エーカーにおよぶ敷地には、ギャラリー、シアター、図書館、レストラン、ショップ、コミュニティスペースなどが整備され、都市と文化をつなぐ新たな拠点としての期待が高まっています。

“ストーリーを語る力”が人と人とをつなぎ、文化を育む。その哲学を空間として体現するルーカス・ミュージアム・オブ・ナラティブ・アート(Lucas Museum of Narrative Art)。2026年の開館を目前に控え、新たな“物語の舞台”の幕開けを、世界中の人々が心待ちにしています。

Lucas Museum of Narrative Art
Address: One Lucas Plaza, Los Angeles, CA
Web Site: Lucas Museum of Narrative Art

photo: © The Lucas Museum of Narrative Art © Eric Charbonneau / Lucas Museum of Narrative Art via Getty Images