ロサンゼルス国際空港(LAX)は、カリフォルニアへの旅の始まりであり、また多くの旅行者にとって旅の終着点でもあります。その玄関口として20年以上にわたり親しまれてきたのが、Sepulveda Boulevard沿いに立つ「LAX」の巨大サインです。高さ32フィート(約9.8メートル)あるこの立体文字は2000年に設置され、ハリウッドサインと並ぶロサンゼルスの象徴として知られてきました。しかし、このアイコンが空港と周辺道路を抜本的に改良する大規模整備計画の一環として一時的に姿を消すことになりました。
このサインは、2000年の民主党全国大会を前に行われた空港エントランスの改修事業で誕生しました。空港の第一印象を刷新する「顔」として設置され、夜間にはライトアップされて旅人を迎えてきました。空港利用者はもちろん、近隣を走るドライバーにとっても象徴的な存在であり、観光客が記念撮影する定番スポットにもなっています。
今回「LAXサイン」が撤去されるのは、Los Angeles World Airports(LAWA)が進める「Airfield & Terminal Modernization Program」にあります。これは2026年のFIFAワールドカップや2028年のロサンゼルス五輪・パラリンピックを見据え、空港アクセスを根本から見直す大規模なリニューアル計画で、Sepulveda Boulevard沿い約4.4マイルの道路を再設計し、空港へ向かう車両と地元交通を分離します。さらに歩行者空間の改善、標識の刷新、エコノミーパーキングへのアクセス強化など、利用者の快適性を高める狙いがあります。

整備計画のひとつにはレンタカー拠点の集約も含まれています。これまで空港周辺に点在していた各社の営業所を「Consolidated Rent-A-Car Facility(ConRAC)」にまとめ、ターミナルとは自動運転ピープルムーバー(APM)で直結する仕組みが整えられます。これまで1日あたり約3200本ものレンタカー会社のシャトルバスがセントラル・ターミナル・エリアを往来し、慢性的な渋滞を引き起こしていました。拠点集約によってこの大量のシャトル運行が不要となり、交通環境は大きく改善される見込みです。レンタカー利用者にとっても、借りやすく返しやすい環境が整い、ロードトリップの起点・終点としての利便性が格段に向上する見通しです。

サインの撤去は、一夜にして行われるわけではありません。まず「X」から作業が始まり、その後「A」、そして最後に「L」が取り外されます。一文字ずつ外されていく様子は、多くの人にとって象徴的な瞬間となるでしょう。すべての文字は一時的にLAWAの保管ヤードで安全に保管され、道路整備が完了した後、新しい景観設計にあわせて再配置される予定です。ただし、復帰の明確な時期はまだ発表されていません。空港全体の再整備は2030年頃まで続く見通しで、サインが戻るのもその過程の一部として慎重に進められるとのこと。
「LAXサイン」が一時的に姿を消すことに寂しさを覚える人もいるでしょう。しかし、渋滞解消、レンタカー利便性の向上、そしてアクセスの改善は、LAXを出発点とするロードトリップをより快適にします。世界中から訪れる旅行者にとって、より便利で効率的なスタート地点が整えば、カリフォルニアの旅そのものが一層魅力を増すことでしょう。しばらくの間「LAXサイン」とはお別れとなりますが、再びこの3つの文字が空港前に戻るそのとき、そこには進化したロサンゼルス国際空港の新しい姿が広がっているはずです。
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photo: ©Discover Los Angeles ©Los Angeles International Airport