自動車の運転には常に事故のリスクがあり、いつでも、誰もが、加害者にも被害者になる可能性があります。特に不慣れな場所での運転は不安が増し、事故のリスクも高まります。ですから海外でレンタカーを借りる際は、万が一に備えてしっかり保険制度を理解し、保険に加入しておくことが大切です。ここでは主要な保険の種類と特徴を整理しました。
最終更新:2025年9月9日
主要自動車保険の種類と内容
レンタカーに付帯する保険には、大きく分けて強制保険と任意保険があります。強制保険は法律で定められた最低限の補償ですが、補償額が不十分な場合も多いため、必要に応じて任意保険で補強するのが一般的です。任意保険は細分化されており、どんなシーンでどのような補償や賠償が受けられるのかを理解することが大切です。そこで以下に、主要な保険の種類とその内容を簡単に紹介します。
強制保険:PI / PL
強制保険は、法律で加入が義務づけられている最低限の保険で、対人補償保険(Personal Injury / PI)や対物補償保険(Property Damage Liability / PL)と呼ばれます。補償額は国や州によって異なりますが、アメリカの一部州では対人1人あたり数千〜数万ドル、対物1事故あたり1万ドル前後にとどまる場合があります。この金額では実際の事故に対応して不十分なため、任意保険の追加自動車損害賠償保険(TPLもしくはLIS)で補強するのが一般的となっています。
追加自動車損害賠償保険:TPL / LIS
アメリカをはじめとする多くの国では、法律で義務づけられた自動車損害賠償保険(強制保険)がレンタカー契約に含まれていますが、強制保険の適用状況や補償上限は州や契約条件によって大きく異なり、十分な補償が付かない、または付帯しないケースもあります(例:カリフォルニア州やテキサス州の一部条件など)。
そこで用意されているのが 追加自動車損害賠償保険(Third Party Liability / TPLもしくはLiability Insurance Supplement / LIS) です。追加自動車損害賠償保険に加入すると、対人・対物の補償額が引き上げられ、万が一の事故でも十分な補償を受けられるようになります。多くの場合、補償限度額は30万ドル前後に設定されています。追加自動車損害賠償保険は任意加入ですが、現地での高額な賠償リスクを考えるとレンタカーを利用する場合には加入しておくのがおすすめです。
車両損害補償制度:LDW / CDW
車両損害補償制度(Loss Damage Waiver / LDW) は、レンタルした車両に盗難・紛失・事故などによる損害が生じた場合に、その損害額を免除するための制度です。契約者の不注意により発生した盗難による損害は補償されません。加入料は借りる車種により異なります。知らない間にショッピングモールで隣の車に擦られた、フリーウェイで飛び石によってフロントガラスに傷がついたなど、不慮の車両破損もよくある話なので、車両返却後のトラブルを避けるためになども加入しておくと安心です。
基本的には免責額(自己負担額)はありませんが、国・地域により一定の免責金額が設定されている場合があります。なお、会社によっては Collision Damage Waiver / CDW という名称で呼ばれることもあります。
搭乗者傷害保険:PAI
搭乗者傷害保険(Personal Accident Insurance/PAI) は、レンタカー契約者および同乗者が事故によりケガを負ったり死亡した場合に、既定の補償額が支払われる保険です。補償対象には医療費や救急搬送費が含まれる場合もあります。
補償金額は会社や契約内容によって異なりますが、1名あたり数千ドルから数万ドル規模の補償が設定されることが一般的です。旅行先での予期せぬ事故に備え、特に家族や友人と一緒に利用する場合に安心感を高めてくれる保険です。
なお、搭乗者傷害保険は既存の海外旅行保険と補償内容が重複する可能性があるため、加入前に自身の保険内容を確認しておくと良いでしょう。また、レンタカー会社によっては手荷物保険(PEC / PEP)とセット販売されるケースもあります。
携行品・手荷物保険:PEC / PEP / PEB
携行品・手荷物保険(Personal Effects Coverage / PEC、Personal Effects Protection / PEPまたはPEB) は、レンタカー利用中に発生した盗難や破損によって旅行者の荷物に損害が生じた場合に補償を受けられる保険です。対象は契約者本人だけでなく、同乗の家族や旅行仲間の荷物も含まれることがあります。
ただし、現金・航空券・貴金属・高価な電子機器(カメラ、スマートフォンなど)は補償対象外となるケースが多いため注意が必要です。適用には警察への盗難届の提出を求められることもあります。
地域や会社によって名称が異なり、アメリカではPECやPEP、オセアニアではPEBと呼ばれることがあります。旅行保険との併用も検討すると安心です。
ロードサイドアシスタンス:RSN / RSP
ロードサイドアシスタンス(Roadside Assistance / RSNまたはRSP) は、レンタル中に発生した車両トラブルに対応するための追加サービスです。契約者が加入することで、緊急時のサポートを受けることができます。
主なサポート内容には以下が含まれます:
- キーの閉じ込み・紛失・破損時の対応
- タイヤのパンクやスペアタイヤ交換
- ガソリン切れ時の燃料供給(通常は数ガロン程度)
- バッテリー上がり時のジャンプスタート
- レッカー移動や緊急時の牽引サービス
サービス内容や利用条件は会社や地域によって異なり、標準プランに含まれていない場合が多いため、必要に応じてオプションとして追加する形になります。旅行先での不測の事態に備え、特に長距離のロードトリップでは安心感を高めてくれる補償です。
各社ごとの保険の違いについて
レンタカー会社ごとに用意されている保険や補償の内容には共通点も多い一方で、免責やセット販売の有無、補償上限額など細かな違いがあります。ここでは主要5社の特徴を整理し、各社ごとの名称の紹介とあわせそれぞれどんな旅行者に向いているかをまとめました。
なお、保険選びに迷ったら車両損害補償制度(LDWなど)と対人・対物補償(LISなど)を契約したうえで、必要に応じてロードサービス(RSNなど)を追加するかを検討するのが良いでしょう。搭乗者傷害保険(PAI)と携行品補償(PEC)は旅行保険との重複を確認して判断するのがおすすめ。それでも選択が難しい、海外ドライブは不安なのでとにかく手厚い補償を選びたいという人は、一部レンタカー会社で用意しているパッケージプランを選ぶのが良いでしょう。手厚い補償を組み合わせながらパッケージ割引となっているためとてもお得感のあるプランになっています。
安心感重視 — 老舗ブランドならではの信頼性
ハーツは老舗ブランドならではの安心感が魅力です。車両損害補償制度(LDW)は免責なしで、事故や盗難時の自己負担が発生しないため、初めての海外ドライブや高額車種を借りる際にも安心。強制保険(LP)に加えて、Liability Insurance Supplement(LIS) に加入することで、対人・対物補償を大幅に拡張できます。さらに搭乗者傷害保険(PAI)と携行品補償(PEC)はセット販売されており、旅行者の人身・荷物両方をカバー可能。シンプルながら安心感を重視したい旅行者や、短期利用で「免責ゼロ」にこだわりたい人に適しています。
- Liability Protection(LP): 強制保険(州によって自動付帯、補償額は低め)
- Liability Insurance Supplement(LIS): LPを補強する追加保険。対人・対物を100万ドル(CA・FLは200万ドル)まで補償
- Loss Damage Waiver(LDW): 車両損害補償制度。免責なしで安心重視
- Personal Accident Insurance(PAI)+ Personal Effects Coverage(PEC): セット加入により人身+荷物をまとめてカバー
バリエーション重視 — 保険を組み合わせて柔軟に選べる
ダラーは必要な保険を一通り揃えているだけでなく、旅行者のニーズに応じて細かくパッケージ化されているのが特徴です。強制保険(LI/LP)の補償額は州ごとに低く不十分な場合があるため、Liability Insurance Supplement(LIS) に加入することで対人・対物補償を大幅に拡張可能。車両損害補償制度(LDW)はアメリカでは免責なしとなるケースが多く、さらに搭乗者傷害(PAI)と携行品補償(PEI)をパッケージにした保険商品(PPP)、病気やケガに対応する疾病補償(ESP)などバリエーションが多彩で、自分に必要な補償だけを選びたい旅行者に適しています。
- Liability Insurance(LI): 強制保険。州によって自動付帯/補償額は低め
- Liability Insurance Supplement(LIS): 対人・対物を100万ドル(CA・FLは200万ドル)まで補償
- Loss Damage Waiver(LDW): 車両損害補償。アメリカでは免責なしとなるケースが多い
- Personal Accident Insurance(PAI): 搭乗者の傷害補償
- Personal Effects Insurance(PEI): 手荷物・携行品補償
- Personal Protection Plan(PPP): PAI+PEIをパッケージ化
- Emergency Sickness Protection(ESP): 疾病補償(外国籍旅行者向け)
バランス型 — 幅広い補償を無理なく組み合わせ
強制保険(LI)を基本に、アメリカでは第三者賠償保険(TPL)で第三者への賠償を最大30万ドルまで拡張(州によりLIが未付帯のケースあり)。車両損害補償制度(LDW)で車両損害を広くカバー。携行品は携行品補償(PEP)としてわかりやすく提供。安心とコストのバランスに優れた補償を用意しています。
- Liability Insurance(LI):法定の強制保険(州により未付帯の場合あり)
- Third Party Liability(TPL):第三者賠償を最大30万ドルに引き上げ
- Loss Damage Waiver(LDW):盗難・事故・破損を幅広く補償
- Personal Accident Insurance(PAI):搭乗者の基本的な傷害補償
- Personal Effects Protection(PEP):携行品補償
節約+安心 — トラブル対応サービスが強み
基本料金に強制保険(LP)が含まれているが補償額は低め。第三者賠償保険(TPL)の追加で賠償を最大30万ドルまで拡張できます。車両損害はLDW/CDWの加入でカバーでき、日常的なトラブルにはロードサイドセーフティネット(RSN)がしっかり対応します。RSNは鍵の紛失やガス欠、あるいはパンクなど、ロードトリップ中にありがちな問題をカバーできるので、節約志向かつ安心を手に入れたい旅行者に適しています。
- Liability Protection(LP):基本料金に含まれる強制保険
- Third Party Liability(TPL):第三者賠償を最大30万ドルに拡張
- Loss Damage Waiver/Collision Damage Waiver(LDW/CDW):盗難・事故・破損の車両損害補償
- Roadside Safety Net(RSN):鍵紛失・ガス欠・パンクなど日常的なトラブル対応
フルカバー志向 — 手厚い補償を組み合わせたい人に
車両損害補償制度(CDW)は免責ゼロで安心感が高いが、加入は任意。強制保険(LI/LP)は最低限にとどまるため、補足責任保険(SLP)で対人・対物補償額を最大30万ドルまで拡張できます。搭乗者傷害保険(PAI)と携行品保険(PEC)はセット加入となり、さらにロードサイドプラス(RSP)でパンクや鍵の紛失、燃料切れなどのトラブルにも対応可能。全方位的に備えたい旅行者に適しています。
- Liability Insurance / Liability Protection(LI/LP):強制保険(最低限の補償)
- Collision Damage Waiver(CDW):免責ゼロで車両損害を補償
- Supplemental Liability Protection(SLP):対人・対物補償を最大30万ドルまで拡張
- Personal Accident Insurance(PAI)+ Personal Effects Coverage(PEC):セット加入
- Roadside Plus(RSP):パンク・鍵紛失・燃料切れ対応