ゲッティ・ヴィラは、サンタモニカの北の海岸沿いにある古代ローマのカントリーハウスを再現した建物の美術館です。ここには、世界で最も裕福な人物と評されたアメリカの石油産業の大物ジャン・ポール・ゲッティ（J. Paul Getty）が集めた膨大なコレクションのうち、古代ギリシャ、ローマ、エトルリアの古代芸術作品が展示されています。この美術館は、ゲッティが目指した「芸術と一般知識の普及」をテーマにしており、約 44000 点のコレクションの鑑賞だけにとどまらず、古代劇の上演やワークショップなどを通じた教育プログラムを積極的に行っていることでも知られています。
1954年、ゲッティが自身の芸術品を一般の人々と共有するため、パシフィック・パリセーズの牧場の一角を美術館に改装したことからこの美術館の歴史が始まります。彼のコレクションはあまりに膨大だったため、1974年により大きな博物館を建設。これが現在のゲッティ・ヴィラです。1997年のゲッティ・センター建設と同時に展示コレクションの整理が行われ、2006年の再オープンから現在のような古代芸術作品を主体とした展示に変わりました。
ゲッティ・ヴィラでは、建物の１階と２階に分かれてコレクションが展示されています。まず1階には、古代ギリシャとエトルリアの古代地中海文化の変遷を示すコレクションが展示されています。例えば、紀元前440年から紀元前430年頃に制作されたとされる青銅で作られた戦士の像（Victory Athlete）、古代ローマ時代の神話の英雄ヘラクレスの大理石像（The Lansdowne Hercules）、そして神話の場面が描かれた古代ギリシャの黒絵式の大きな壺（Prize Vessel with a Chariot Race）など古代ギリシャやエトルリアの高い技術と芸術性を示す作品が並んでいます。
そして、２階にはローマ帝国の多くの芸術作品が展示されています。ミイラ肖像画（Mummy Portrait of Isidora）やアキレスの生涯の場面が描かれた石棺（Sarcophagus with Scenes from the life of Achilles）、当時の食生活を垣間見ることのできるワインカップ（Wine Cup with a Bacchic Scene）など、多岐にわたる分野のコレクションが並んでいます。また、ゲッティのコレクションのほか、世界中の美術館から集められた芸術作品を展示する特別展も開催されています。さらに彼のコレクションに興味を持ったのであれば、クルマで30分ほどでアクセスできるゲッティ・センター（Getty Center）を訪れてみるのもよいでしょう。
美術館のコレクションを見学したら、敷地内にある古代ローマの邸宅を模して設計された４つの庭園の散策を楽しみましょう。ペリスタイル（古代ローマなどの建築様式で柱に囲まれたポーチや庭）の外庭と中庭、ハーブガーデン、美しく装飾された２つの噴水のあるイーストガーデン。特に、「アウター・ペリスタイル」と名付けられたゲッティ・ヴィラ最大の庭園は、中央の大きなリフレクティング・プールやレプリカのブロンズ像の配置位置までこだわって再現された古代ローマの邸宅の美しい庭園で、その中を自由に散策することできます。
施設内には、新鮮な地元の食材を使ったカジュアルな地中海風の料理が楽しめるカフェやコーヒーキオスクもあります。また、木曜と土日にはアフタヌーンティが楽しめるガーデン・ティが開催されています（要予約）。そして、ゲッティ・ミュージアム・ストアでは、コレクションに関連したアイテムも販売されています。
ゲティ・ヴィラは、定休日の火曜日と感謝祭やクリスマスなどの特別な日を除き、10時から17時までオープンしています。入場料は無料ですが、公式サイトから事前予約をする必要があります。また、駐車場はクルマ1 台につき$25ですが、午後15時以降やイベント等開催時には料金が異なります。なお、同日にゲッティ・センターを訪問する場合、１回の支払いで２つの美術館に駐車することできます。その際は、駐車場のスタッフにゲッティ・センターの見学予約を提示してクーポンチケットをもらうことをお忘れなく。
クルマでゲッティ・ヴィラに行く場合、北行きのパシフィック・コースト・ハイウェイ (PCH) から、右折車線を利用してゲッティ・ヴィラ・ドライブに入る必要があります。南行きの左折車線を利用し、コーストライン・ドライブ経由でゲッティ・ヴィラ・ドライブに入ことはできないので要注意です。
Getty Villa
Address: 17985 Pacific Coast Hwy, Pacific Palisades, CA
Web Site: Getty Villa
photo: ©︎KURUMAG
