ポートランド(Portland)のダウンタウンから車で20分ほどの距離にありながら、深い森の静けさに包まれることができるのがフォレストパーク(Forest Park)です。1948年に開園したこの公園は、総面積約21平方キロメートル、5000エーカー以上にもおよぶ広さを誇り、全米最大級の都市型森林公園のひとつです。ポートランドが「自然と都市の調和した町」といわれる理由のひとつを体感できるスポットとして、地元の人々はもちろん観光客からも人気を集めています。
この公園の魅力は、なんといっても整備された豊富なトレイルにあります。園内には約112kmもの小径が縦横に伸び、散歩感覚で歩ける短いコースから、半日以上かけて歩く本格的なルートまで揃っています。代表的なのは、園内を縦断してポートランド市内へと続く全長約48kmのワイルドウッド・トレイル(Wildwood Trail)です。また、ローワー・マクレイ・パーク(Lower Macleay Trail)からピトックマンション(Pittock Mansion)を往復する約8kmのコースも人気があります。ウィラメット川を望む景観や原生林の雰囲気を味わえるルートは、多くのハイカーを魅了します。春には新緑、夏には涼やかな木陰、秋には紅葉、冬には静かな森と、四季折々の表情を楽しめるのも魅力となっています。



森林保護区の園内には112種類の鳥類と62種の動物が棲息しています。散策をしていると、リスや鹿などの小動物と出会えることもあります。また、野鳥観察のスポットとしても知られており、双眼鏡を手に散策する人の姿も少なくありません。都市から近い場所でこれほど豊かな生態系を体感できるのは、ポートランドならではといえるでしょう。
園内にはところどころに歴史的建造物や記念碑が残されており、単なる自然公園にとどまらない魅力を感じさせます。なかでも有名なのが「ウィッチズ・キャッスル(Witch’s Castle)」と呼ばれる石造りの廃墟です。正式には1930年代に建てられた公衆トイレの跡ですが、苔むした石壁が森に溶け込む姿が幻想的で、地元では「魔女の城」と呼ばれるようになりました。ハイキングやトレイルランの途中に立ち寄れるフォトスポットとして人気があり、特に霧のかかる朝や雨上がりには神秘的な雰囲気を漂わせます。
フォレストパークは年中無休で、開園時間は5時から22時まで。入場料は無料です。訪れる際は、動きやすい靴と季節に応じた服装を準備するのがおすすめです。森の中は市街地より気温が低く、雨も多いため、レインジャケットを携帯すると安心です。また、園内には飲食施設がないため、水分補給用のドリンクや軽食を持参するとよいでしょう。さらに、この公園は近隣住民にとっても大切な生活空間であるため、静けさを保ち、ゴミを持ち帰るなどマナーを守って楽しむことが求められます。
フォレスト・パークはロードトリップの途中に立ち寄るのにも便利です。ダウンタウンからのアクセスもよく、多くは近隣住民の方と共有となりますが、無料の駐車場も数ヶ所に設けられています。朝の散歩で自然に触れてから街歩きを楽しむ、あるいはドライブの合間に立ち寄ってリフレッシュするなど、旅のスケジュールに組み込みやすいスポットです。歴史的建造物のピトック・マンション(Pittock Mansion)や、日本庭園やローズガーデンで知られるワシントンパーク(Wshington Park)、さらに美しい吊り橋セント・ジョーンズ橋(St. Johns Bridge)を渡ってセント・ジョーンズ地区を訪れるなど、周辺観光へのアクセスもしやすい立地にあります。都会の喧騒からほんの少し離れるだけで、驚くほどの静けさと自然美に出会えるフォレストパーク。ここを訪れれば、ポートランドならではの自然と歴史の融合を存分に味わうことができるはずです。
Location / Address
Official Web Site: Forest Park
photo:© Travel Portland © Nick Mendez, nickmendez.com © Justin Katigbak, Travel Portland