素晴らしい自然に恵まれ、年間を通じてさまざまなアウトドアが楽しめるセントラルオレゴンの人気の都市、ベンド(Bend)。そんなベンドでの滞在をより楽しいものにしてくれるのが、町の至るところで目にする“パブリックアート”です。数あるアート作品のなかでも、ラウンドアバウト(環状交差点)の中央に個性豊かな様々な彫刻作品が現れるラウンドアバウト・アート・ルート(Roundabout Art Route)は、この地をロードトリップで訪れたひととだけが存分に楽しめる特別なアート群です。

かつて町に美術館がなかったことがベンドにパブリックアートが増えた背景のひとつといわれており、周辺の町まで出かけなくてもアートに触れられる場所をつくろうと、1967年に地元の女性たちが Art in Public Places(以下 AIPP) を設立。「市民がアートとともに暮らす町」を目指したこの活動は、ダウンタウンから始まり、やがて地元作家だけでなく世界中のアーティストが参加する取り組みへと発展していきました。
ラウンドアバウト・アート・ルートの誕生は、町の交通渋滞を改善するためにラウンドアバウトが次々と建設されたことがきっかけでした。殺風景になりがちな交差点の景観をより魅力的なものにしようと、市と AIPP が協力してパブリックアートの設置を推進。2001年に最初の作品が設置され、現在では20点を超えるアートが市内のラウンドアバウトに点在しています。こうした取り組みは評価も高く、アメリカ芸術協会から 「米国内で最も革新的なパブリックアートへのアプローチのひとつ」 として表彰されています。


ラウンドアバウトに展示されている作品は作家もテーマも多様です。2001年に設置された最初の作品のひとつ Redsides は、デシューツ川に生息するレッドバンドトラウトへのオマージュ。風に揺れて動く姿は、川を遡上する魚の群れを思わせます。


そのほかにも、地元の人々から“Flaming Chicken”の愛称で親しまれる初期の代表作 Phoenix Rising 、ベンドらしい水辺のアクティビティを象徴する9艘のカヤックで構成された Yakaya、市政100周年を記念した Centennial Logger、鋼鉄製のブレード60枚を用いて高さ39フィート(約11m)で火山の営みを表現した High Desert Spiralなど、どの作品もベンドとのつながりを感じさせるストーリーが込められています。Visit Bend の公式ガイドでは、作品ごとの解説も詳しく紹介されています。



ラウンドアバウト・アート・ルートに決まった巡り方はありません。気になった作品だけを訪ねてもよし、町巡りのドライブとして全作品をゆっくり辿ってもよし。作品ごとに専用の駐車場があるわけではないので、じっくり鑑賞したい場合は周辺のショッピングエリアやパークに立ち寄りながら楽しむのがおすすめです。オールド・ミル・ディストリクト(Old Mill District) や Downtown Bend と組み合わせれば、散策とドライブの両方で町の魅力を味わうことができます。公式サイトでは、作品紹介と合わせて地図もダウンロードできます。
ただ目的地へ向かうだけではなく、交差点に差しかかるたびに現れる彫刻に少しだけ意識を向けてみてください。美術館がなくても、市民の創意と文化が積み重なって“町そのものがアートギャラリー”になっている──。そんなベンドらしい風景を体験できるのが、ラウンドアバウト・アート・ルートの魅力です。

Web Site: Visit Bend Roundabout Art Route Map
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photo:©Visit Bend ©plusroadtrip

