アメリカ初のシーニック・ハイウェイと知られる、オレゴン州を代表する景観道路ヒストリック・コロンビア・リバー・ハイウェイ・シーニック・バイウェイ(Historic Columbia River Highway Scenic Byway)。1916年に完成したこの道は、当時「現代の偉大な技術的成果」として称えられました。現在は「All-American Road」に指定され、国定歴史建造物にも指定されています。設計を手掛けた技師サミュエル・C・ランカスターは「自然を損なわず、その美を最大限に見せる道路」を目指したとされ、全長約120kmにわたりコロンビア川渓谷の絶景を走り抜けるこのルートは、滝や展望台に直接アクセスできる構造になっており、この地を旅する人々を魅了し続けています。
コロンビア川渓谷は全長約130km、深さは最大1200mを誇る巨大な峡谷で、美しい自然を誇るこのエリア一帯は国立景観区に指定されています。氷河期に起きたミズーラ洪水として知られる大規模な洪水によって、現在見られる断崖や柱状節理がつくられました。渓谷には16種の固有植物と150種以上の希少植物が生育し、多様な動物も生息しています。ハイウェイ沿いには多くのトレイルが整備されており、車窓からの景観だけでなく、徒歩で滝や渓谷を間近に体験できるのも魅力です。


出発点は、ポートランド近郊のトラウトデール(Troutdale)。ポートランド(Portland)中心部からは、I-84経由で30分程度のドライブでアクセスできます。町を抜けてサンディ川を渡ると、ヒストリック・ハイウェイの旅が始まります。この川は、かつてルイス&クラーク探検隊が1805年にキャンプを張った場所で、現在「ワイルド&シーニック・リバー」のひとつに指定されています。果樹園やブルーベリー畑を眺め、コルベット(Corbett)の集落を過ぎると、雄大なマウントフッド(Mt. Hood)の姿が現れます。
最初のハイライトは、クラウンポイント(Crown Point)です。ポートランド・ウィメンズ・フォーラム・シーニック展望台(Portland Women’s Forum State Scenic Viewpoint)や1918年に建てられたビスタハウス(Vista House)からはコロンビア川と渓谷の壮大な景観を一望できます。標高約300mの断崖に建つこの展望施設は、オレゴン開拓者の記念碑としても知られ、絶好の撮影スポットとして人気です。

クラウンポイントを過ぎると、「フィギュアエイト・ループ」と呼ばれる連続カーブを下り、滝の連続区間へ。ラトレル滝、シェパーズ・デル滝、ブライダルベール滝、ワヒーケナ滝と次々に現れ、最大の見どころとなる落差189mのマルトノマ滝(Multnomah Falls)へと到着します。アメリカ本土で最も高い滝のひとつで、展望橋や遊歩道から迫力ある姿を間近に楽しめます。滝のふもとに建つ1925年築のロッジでは軽食やお土産も購入可能。週末や夏季は駐車場が非常に混み合うため、早朝の訪問がおすすめです。さらに進むとホーステイル滝(Horsetail Falls)が道路脇に現れ、車内から水しぶきを感じるほど近くで眺められます。

その先のドッドソン(Dodson)付近で一度I-84に合流し、東へ進むとボンネビル・ダム(Bonneville Dam)に到着。ボンネビル・ダムは、1930年代に建設された巨大ダムで、発電施設や魚道(川を遡上する魚たちのためのもの)を見学できます。さらに東へ約30分走るとカスケード・ロックス(Cascade Locks)の町に入り、遊覧船によるコロンビア川クルーズやブリッジ・オブ・ザ・ゴッズ(Bridge of the Gods)の壮大な景観を楽しめます。
東へ約30km進むと、フッドリバー(Hood River)に到着。安定した風が吹くことからウィンドサーフィンの聖地として知られ、ワインやクラフトビール、地元食材を使ったレストランも充実。アウトドアと街歩きを兼ねて楽しめる人気の拠点です。


フッドリバーを過ぎモジア周辺へ入ると、湿潤な西部の緑豊かな景観が乾燥した東部の大地へと移り変わります。ここでは春に桜や野花が咲き誇り、果樹園が一帯を彩ります。ここから始まるハイウェイの第二区間では、「モジア・ツイン・トンネル」が自転車や徒歩専用ルートとして整備されており、往時のハイウェイの姿を静かに楽しむことができます。さらに進むとロウィーナ峠(Rowena Crest Viewpoint)に到達し、そこには標高差を利用したループ状の道路と広大な展望が待っています。隣接するトム・マッコール自然保護区(Tom McCall Preserve)では、春に一面の野草が咲き誇り、訪れる人々を魅了しています。

ルートの終点はザ・ダレス(The Dalles)。ポートランド(Portland)から約120kmのところに位置し、古代から先住民の集会地であり、オレゴントレイルの重要な拠点としての歴史を持つ町。コロンビア・ゴージ・ディスカバリーセンター(Columbia Gorge Discovery Center & Museum)やワスコ郡歴史博物館(Wasco County Historical Society/The Rorick House)、さらにルート沿いにあるルイス&クラーク探検隊が宿営したロックフォート遺跡(Rock Fort)などを訪ねれば、この地の自然史や人類史に触れることができます。
ヒストリック・コロンビア・リバー・ハイウェイ・シーニック・バイウェイの観光を含めた走行時間の目安は、およそ4〜6時間。ポートランド(Portland)から日帰りでも走れる距離ながら、渓谷の壮大な自然、歴史ある建造物、そして東西でまったく異なる景観を一度に体感できる特別なルートです。
ロードトリップ計画のポイント
ヒストリック・コロンビア・リバー・ハイウェイ・シーニック・バイウェイは四季折々に異なる魅力をみせてくれます。春は野花や果樹園の花が咲き、夏は滝やトレイルがにぎわい、秋は渓谷を彩る紅葉が見事です。特にマルトノマ滝周辺は週末や観光シーズンに大変混み合うため、午前中の早い時間の訪問がおすすめ。主要滝の駐車場は小規模なので、混雑時はI-84沿いの大きな駐車場から歩道や連絡路を利用するのが便利です。また、冬は雪や凍結により一部区間が通行止めとなることもあるため、出発前に道路状況をチェックしておくと安心です。
Historic Columbia River Highway Scenic Byway
Web Site: Historic Columbia River Highway Scenic Byway
All-American Roadとは?
全米シーニック・バイウェイ・プログラムの中で最上位に位置づけられる称号で、米国内でも限られたルートだけに与えられています。指定を受けるためには、風景の美しさだけでなく、歴史や文化、考古学的価値、レクリエーション性といった複数の資質を兼ね備えていることが条件。つまり、単なる移動のための道ではなく、その道自体が「訪れることを目的とする価値」を持ち、世界的に注目される観光資源であることを評価基準としています。
National Scenic Bywayとは?
1991年に創設された全米シーニック・バイウェイ・プログラムの下で認定される道路の総称で、地域の景観や自然環境、歴史、文化などに顕著な価値を持つことが条件。全米各地に点在するバイウェイは、それぞれが地域の特色を映し出すものであり、訪れる人に土地の個性や物語を伝える役割を果たしています。指定を受けた道路では、沿線の観光資源や文化的遺産の保護・活用も進められ、ドライバーは単に景色を眺めるだけでなく、地域の歴史や文化を体験しながら走ることができます。旅行者にとっては、アメリカの多様な風土を理解するうえで最適なルートといえるでしょう。
オレゴン州のAll-American Road & National Scenic Byway
All American Road
Historic Columbia River Highway Scenic Byway
Hells Canyon Scenic Byway
Volcanic Legasy Scenic Byway
Pacific Cast Scenic Byway
National Scenic Byway
West Cascades Scenic Byway
McKenzie Pass–Santiam Pass Scenic Byway
Mt. Hood Scenic Byway
Oregpn Outback Scenic Byway
Rougue-Umapqua Scenic Byway
Cascade Lakes Scenic Byway

photo: ©KURUMAG、©Travel Oregon