ロサンゼルス(Los Angeles)から北へ車で約1時間半。アンテロープ・バレーにあるランカスター郊外には、車でしか体験できないユニークなスポット、ミュージカルロード(The Musical Road)があります。車を一定の速度(公称時速約55マイル)で走らせると、路面に刻まれた溝がタイヤの振動を音に変え、「ウィリアム・テル序曲」のメロディを奏でてくれます。まるで道路自体が楽器のように響く、不思議で遊び心にあふれたドライブ体験ができる場所です。
仕組みはシンプルで、路面に等間隔で刻まれた細かい溝にタイヤが触れることで生まれる振動音を利用しています。2008年、ホンダのテレビCMのために考案され、全米初のミュージカルロードとして市街地に近いAvenue Kに設置されましたが、音が響きすぎて近隣住民から苦情が寄せられてしまいました。その後、現在の西アベニューGに移設され、今ではロードトリップの名物として多くのドライバーを楽しませています。走行速度が速すぎたり遅すぎたりするとメロディが崩れてしまうため、制限速度を守ることが体験のコツです。


ロサンゼルスからランカスターに向かうには、フリーウェイCA-14を使うのが最短ですが、ドライブを楽しみたいのであればエンジェルス・フォレスト・ハイウェイ(Angeles Forest Highway)を経由するのがおすすめです。このルートはアンジェリス国立の森を縦断する山岳道路で、パサデナ(Pasadena)やグレンデール方面からアクセスできます。標高を上がるにつれて都市の景色が遠のき、深い森林とワインディングロードが広がり、峠を越えるとアンテロープ・バレーの雄大な砂漠地帯が眼前に広がります。山から砂漠へと劇的に変化する景色は、カリフォルニアらしいスケールの大きなドライブを体感させてくれるでしょう。

ランカスターは「航空の町」としても知られています。近郊にはエドワーズ空軍基地や航空機製造の拠点があり、航空研究やテスト飛行と深い関わりを持ってきました。その歴史を感じられる施設も多く、ミュージカルロードとあわせて訪ねると旅の楽しみが広がります。たとえば、市内にあるランカスター・ミュージアム・オブ・アート&ヒストリー(MOAH)があり、地域の文化や歴史を紹介。さらに車で20分ほど南のパームデールには「ジョー・デイビス・ヘリテージ・エアパーク」や「ブラックバード・エアパーク」があり、冷戦期の名機SR-71ブラックバードをはじめ、さまざまな軍用機が展示されています。航空ファンはもちろん、家族連れにも人気のスポットです。春であれば「アンテロープ・バレー・カリフォルニア・ポピー保護区」にも立ち寄りたい。丘一面がオレンジ色に染まるポピーの花畑は、ロサンゼルス近郊で見られる絶景のひとつです。
ミュージカルロードには専用の駐車場はなく、道路脇に一時的に停車できる程度のスペースしかありません。基本的には走りながら体験するスポットなので、安全に注意し、周囲の車が少ない時間帯を狙うと快適に楽しめます。ロサンゼルスからは日帰りドライブにちょうどよい距離で、朝に出発して山岳道路を抜け、ランカスターでミュージカルロードや航空関連の施設を巡り、夕方に帰路につくというプランがおすすめです

道路そのものが音楽を奏でるというユニークな体験は、観光地らしい看板や施設がなくても強い印象を残してくれます。気軽に行ける日帰りロードトリップ先として、カリフォルニアらしい自然の風景や航空の歴史と組み合わせて楽しんでみてはいかがでしょうか。
Location / Address
Official Web Site: The Musical Road
photo:©plusroadtrip