サンタ・クルーズ(Santa Cruz)の町を歩くと、至るところで壁画(Mural)に出会います。海へと続く通りの壁、ダウンタウンの建物の側面、ビーチへ向かう小道の一角。そこに描かれているのは、波やクジラ、スケートボード、抽象的な色彩、そして時には社会的なメッセージ。作品数は140を超えており、今もなお新たな作品が加わり続けています。地元のアーティストを中心にしたその作品の多くは、観光を目的というより、サンタ・クルーズの歴史や文化を映し出した純粋なアート作品として町の日常の風景に溶け込んでいます。
この町に壁画が多い背景には、1930年代のニューディール政策による芸術家の雇用創出、1960年代から70年代にかけて起きたメキシコ系アメリカ人の人権運動(チカーノ運動)、1980年代のサブカルチャーの台頭、そして1989年のロマ・プリエタ地震からの復興といった歴史の流れがあります。市が壁画制作費の一部を補助する「Matching Grant Mural Program」が1994年に始まり、作品数は増え、この文化が現在へと受け継がれることになります。
壁画が多く見られるのは、ダウンタウンのPacific Avenue周辺です。カフェやショップが並ぶ通りを歩きながら、路地へと少し入ると、思いがけない場所に大きな作品が現れます。1930年代に建てられた歴史的な郵便局の壁面や、海をモチーフにした作品、鮮やかな色彩で描かれた抽象画など、その表現はさまざまです。サンタ・クルーズ・ビーチ・ボードウォーク(Santa Cruz Beach Boardwalk)へと向かう途中にもアートが点在し、にぎやかな遊園地の雰囲気とはまた異なる、町のもうひとつの表情を見せてくれます。

少し足を延ばし、郊外のエリアにも出かけるのもおすすめです。ナチュラル・ブリッジ・ステイト・ビーチ(Natural Bridges State Beach)に近いWestsideでは、倉庫や工場跡の壁面に描かれたアートは、ダウンタウンとは異なる空気をまとい、よりローカルな雰囲気を感じさせます。キャピトラ・ヴィレッジ(Capitola Village)では、地元の風景や花(ベゴニア)を描いた作品など町の日常に溶け込んだ作品を眺めることができます。
壁画散策は、特別な準備がなくても楽しめます。ダウンタウンからビーチ周辺までをゆっくり歩いて回るなら、1時間から1時間半ほどのコースになります。朝の柔らかな光の中では色彩が穏やかに映え、夕方には建物の影が伸び、壁画に立体感が生まれます。時間帯によって見え方が変わるのも、屋外アートならではの魅力です。公式サイトに掲載されている地図を使うと、訪問計画を立てるのに便利です。
ロードトリップの途中、海岸線の景色を楽しむだけでなく、少し車を止めて町を歩いてみる。壁に描かれた色彩やメッセージを探しながら散策する時間は、サンタクルーズという町をより深く感じるきっかけになるでしょう。公式サイトには全作品が掲載されているので、お目当てを見つけて実物を見に行くのもよし、偶然の出会いを楽しむのもよし。海と山、自然と文化が交差するサンタ・クルーズ。その空気を最も身近に感じられる楽しみ方のひとつが、壁画散策なのかもしれません。
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photo: © Paul Schraub

